「ブラック企業だ」は、削除が難しい

転職活動のとき、口コミサイトやSNSで会社の評判を確かめる人は多いだろう。転職希望者にとっては貴重な情報源だが、企業側は神経質にならざるをえない。「ここはブラック企業です」などと書かれれば、採用に支障が出るおそれもある。ネット上に悪評を書かれたら、書き込みを削除することはできるだろうか。

まずサイト運営者への削除依頼をすることになるが、インターネットトラブルを多く手がける刈谷龍太弁護士は「サイトによって対応に温度差がある」と明かす。

「私の経験でいうと、上場企業が運営するサイトほど消すのは難しい。簡単に削除すると、逆に書き込んだ本人から『表現の自由を侵害された』と損害賠償を請求されるリスクがあるので、慎重姿勢なのです」

サイト運営者が削除に応じなければ、裁判所に削除の仮処分を申し立てる。裁判所は、書き込みによって何らかの権利侵害が起きていれば仮処分の決定を下す。具体的には、名誉毀損に当たるかどうか。法人にも名誉権があり、書き込みによって社会的評価が傷つけば名誉毀損になりうる。

ただし、会社の評判を貶める書き込みなら何でも名誉毀損になるわけではない。重要なのは、「事実の摘示」(客観的な事実を示すこと)があるかどうかだ。

「『あの会社はブラック企業』は単なる評価であり、表現の自由として認められやすい。『毎日夜11時まで残業させられる』というように、具体的な事実を示してはじめて名誉毀損が成立します」