不動産を「負の遺産」ではなく「優良な資産」にするためには、どうすればいいのか。専門家に話を聞いた。第3回は「老後の暮らし編」――。(全4回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年12月3日号)の掲載記事を再編集したものです。

有料老人ホームだからサービスが手厚いわけではない

高齢者施設には、さまざまなものがあり、費用もまちまちだ。介護福祉ジャーナリストの田中元さんは、「一口に高齢者施設といっても、制度的にはかなり幅があります」と語る。今回は、まだ介護が必要ないことを前提に高齢期の住まいとしての施設を考えるので、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(以下、「サ高住」)、シニア向けマンションなどを対象に検討してみよう。いずれも身の回りのことは自分でできる自立した高齢者向けの住まいだ。

写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz

介護・暮らしジャーナリストでNPO法人パオッコ~離れて暮らす親のケアを考える会~理事長の太田差惠子さんは「高齢者施設の区分けは難しくてわかりにくい。有料老人ホームだからサービスが手厚いわけでも、サ高住だからサービスが手薄なわけでもありません。実際に入居先を検討するときは種類からではなく、そこで何をしてくれるかをもとに考えましょう」とアドバイスする。

まずはどんな分類があるか見てみよう。

有料老人ホームは、老人福祉法に基づく施設である。その定義は「おおむね60歳以上の高齢者を1人でも入居させ、食事、介護、家事、健康管理のサービスのどれか1つでも提供していること」。この条件に当てはまる施設は、ごく小さい規模であっても有料老人ホームとみなされ、事業者は都道府県に届け出なければならない。事業者は社会福祉法人から株式会社までさまざまだ。

これに対して、サ高住は高齢者の居住の安定確保に関する法律に基づく施設。国が定めた基準をクリアしている高齢者向けの賃貸物件だ。施設内がバリアフリーで、安否確認、生活相談サービスを提供していることなどが求められる。

一方、シニア向けマンションには特に規定はなく、基本的には一般の分譲マンションと変わらない。バリアフリーに配慮されている、レストランやプールなど共有施設が充実している、管理者が常駐して入居者の生活相談を受けるなど高齢者が暮らしやすくなるサービスの提供をアピールして、各社が競い合っている。