返還命令が出ても、「連れ去り親」は無視できる

米国務省は、国際的な子供の拉致に関する2018年の年次報告書で、日本をハーグ条約の義務不履行国の1つに認定した。

日本のハーグ条約批准時、日本にいる子と面会を求めてワシントンでデモをする親たち。(共同通信=写真)

国際結婚などが破綻したとき、一方の親がもう片方の親の了承なしに子を自分の母国に連れ帰ることがある。連れ去られた親側から見ると、これは違法性が高い行為。そこで子をひとまず元の常居地国に返還することを定めたのがハーグ条約だ。日本は2014年に批准して、18年2月までに23件の返還命令を出している。にもかかわらず、なぜ不履行国と名指しで非難されたのか。

実は米国務省も日本に一定の評価をしている。条約批准以降、連れ去りの件数は減少傾向にあるからだ。

問題は、返還命令が出たのに、それに従わない親がいること。23件の返還命令のうち、6件は代替執行(執行官が子を解放する強制執行)になったものの、親の妨害に遭うなどして6件とも失敗した。強制執行の実効性の弱さを指して、米国務省は不履行と批判しているわけだ。

海外では、子を隠す親は留置所に入る

裁判所から返還命令が出ても親が従わないとき、日本では、どのような手順で強制執行されるのか。

強制執行は、返還しない日数に応じて金銭の支払いを義務づける間接強制からスタートする。国際間の子の連れ去り案件を数多く手掛ける本多広高弁護士によると、「1日1万円の支払いを求められる例がある」とのこと。

間接強制後2週間経過しても返還されなければ、執行官による解放実施が行われる。しかし、ハードルは高い。