定年後の60~74歳までの15年間は、元気で好きなことができる「人生の黄金期間」。このとき充実した第2の人生を送るには、50代から準備しておくことが重要だ。8人の実体験をお伝えしよう。1人目は「年商3200万円」という68歳のケースについて――。

※本稿は、雑誌「プレジデント」(2017年11月13日号)の特集「金持ち老後、ビンボー老後」の記事を再編集したものです。

福田英治さん 68歳 省エネルギープロジェクト社長
開業:2009年 形態:株式会社 資本金:400万円を折半 従業員:3人 売上高:年商3200万円

IT時代に逆行した、アナログの世界

富士電機に勤めていた福田英治さんが、「省エネルギープロジェクト」を設立したのは定年直後の2009年10月。資本金の400万円は、共同経営に当たる安東伸彦さんと折半した。

設備を点検する福田さん。省エネ対策による効果を定期的に測定し、データとして「見える化」する検証業務を得意としている。しかし「言うは易く、行うは難し」で、膨大なデータをエクセルに落とし込むだけでも大変な作業だ。

「大学で電気工学を専攻し、当初はビルや工場の電気設備エンジニアとして現場を任されました」と語る福田さんは、1998年に新設されたエコプロジェクト推進室の技術担当部長に就く。そして、オフィスビルや工場のエネルギー削減の支援事業に携わった。

「省エネについては素人で、イチからの勉強でしたが、実に奥が深い。クライアント企業の電気使用量などの現状を正確に分析することが、この仕事での最大のポイントです」(福田さん)

IT時代にもかかわらず、プリントアウトしたデータや配電関係の図面などを自分の目で見て、現状を把握していく。それから省エネ効果を見積もり、省エネ設備の改善を提案する。それだけに、蓄積してきた専門知識と経験がモノをいう世界なのである。

「事業のひとつがエネルギー削減を担保して省エネ設備を導入してもらうESCO事業と呼ばれるもの。当初想定したとおりの省エネ削減効果を得ているか、10年以上も検証していく必要がある。でも私が定年退職すると、検証できる人材がいなくなるのです」(同)