ラグビー界の「レジェンド」

どの競技にも現役ながら「レジェンド」と形容される選手がいる。大リーグのイチローもそうだし、スキージャンプの葛西紀明、サッカーの三浦知良……。ラグビーの伊藤剛臣もまた、44歳にして、すこぶる元気である。

8日。雨上がりの釜石市球技場(松倉グラウンド)。タケさんこと伊藤剛臣は釜石シーウェイブス(SW)のロックとしてフル出場し、チームの勝利(54-12)に貢献した。持ち前の嗅覚と瞬発力で先制トライをマークしたときは、スタンドでは大漁旗が打ち振られ、ファンからこう、声援が上がった。「いいぞ。史上最年長トライだぁ」と。

トライのほか、年齢をまったく感じさせない運動量でボールを生かし、大声を出してチームメイトを鼓舞する。神戸製鋼で18年間プレーしたあと、釜石SWにトライアウトで移って4年目。日本代表キャップ(国別代表戦出場)数「62」はだてではない。巧い、まだ若い。チームメイトの30歳フランカー、佐伯悠は冗談口調でため息をつく。

「集中力がすごい。タケさんはバケモノですよ。偉ぶったところはないし、練習で手を抜くこともありません」

それにしても、なぜ、こうも元気なのだろう。釜石SWの熱烈サポーターの土肥守医師は「天性の才能と本人のピュアな性格からくる努力の継続のたまものでしょう」と分析する。天性の才能とは、もちろん図抜けた身体能力もあるが、「目的のために、余計なことを考えない能力」と説明する。

すなわち、ロックという役割を愚直に遂行する。からだを張る。または目的のために準備も怠らない。トレーニングしかり、からだのケア、レスト(休息)しかり、である。