リーディングポジションをとる

昭和シェル石油 香藤繁常顧問

私が会長に就任した2009年3月当時、国内石油市場は需要の減少に伴う供給過剰状態に陥っていた。市況は低調で、当社の収益構造も悪化していた。けれども、国内精製能力の削減は遅々として進まない。「供給過剰になるだろう」ということは、私も数年前から予測していたのだが、当社も含めて業界全体として具体的な対策が取れていなかったのである。だから、会長としての最初の仕事は、そこに有効な一手を打つことだった。

そのままなら石油の販売価格は、その時点で最も競争力のある会社が自社の収益を確保できる値段に収斂していく。残りの元売り各社は、その価格に合わせざるをえないからだ。だからといって、すぐにどこかが経営破綻に直面するという状況でもない。そうした時期がどれだけ続くかは予測不能だが、その間は、嫌でも熾烈なサバイバルゲームが続いていくことになる。

では、昭和シェル石油の舵取りの軸をどこに据えるか。私はまず、当社のサプライチェーン全体のコストパフォーマンスを高めることに集中した。同じコストをかけるのであれば、そこから上がる付加価値はより高くなければいけない。すなわち、高生産性の実現である。その場合に大事なのがキャッシュフローだ。営業、投資、財務活動による資金の流れが健全であるためのマネジメントに注力した。

こうした基本的な考え方は、経営陣と社員が共有していく必要がある。いわば同心化だ。これができないと、私の思いも全社的な行動にはなっていかない。その際、求められるのが“大義”であり、それをわかりやすい言葉で伝えることが不可欠だ。私が掲げたのは「わが社はエネルギーカンパニーとしてリーディングポジションを取る」ということ。何をもってリーディングポジションとするかといえば、単位当たりでの収益性ナンバーワンだ。