突発的なできごとや洪水のような日常業務に追われていると、本当に重要な仕事が見えなくなってしまう。そんな「アリ地獄」から抜け出す新たな思考習慣とは――。

日給1万円アルバイトからの出発

15年前にタイム・マネジメント4.0の考え方に出合い、人生が大きく様変わりしたのが清掃業を営むファイヴエーカンパニーの間宮孝洋社長である。「人生が180度変わった、変化の権化のような人です」。

間宮社長の妻でもある、同社の間宮歌子取締役は笑顔で語る。きっかけはフランクリン・プランナーというタイム・マネジメント4.0に基づいてつくられた手帳を先輩が持っているのを見て、自分も購入したことだった。

「私はずっとロックバンドをやっていて、大学を卒業した後も清掃のアルバイトをしながらプロデビューを目指していました。しかし才能のなさに気付いてバンドは解散。すでに結婚して子供も2人いるのに収入は日給1万円で、どうやって子供たちを育てていけばいいのか、どうすれば成功できるのか悶々としていた頃でした」(間宮社長)

そして、たまたま清掃会社の面接に行ったところ、経営者が同じ手帳を使っていて意気投合し、そのまま就職。入社後は研修を会社の費用で受講させてもらうなどして、本格的にタイム・マネジメント4.0に取り組んだ。

社長になりたい、リビングの広々とした家に住みたい、子供を海外留学させたい、ベンツに乗りたい――。具体的な目標としてありたい自分、したいこと、欲しいものをすべて書きだした。それらの土台となる価値観として1番に明確化したのは「自分を大切にする」だった。自信を失い「いつも俺ってダメだと思っていた」からである。そして仕事に日々没頭しながら、それらの内容を書いた手帳を肌身離さず持ち、常に眺めるようにした。

「正直、仕事が忙しくて『緊急ではないが重要』な第2領域にはなかなか集中できませんでしたが、それを意識しているかどうかでだいぶ違います。それに、価値観や目標はしょっちゅうブレるんですが、手帳を見返したり同じ仲間と会ったりすることが、自分の目指す方向性に立ち返る機会になりました」