タワマン節税にようやく国税庁がメス
ただ、この手法については国税庁が問題視し、税負担の公平化を理由として評価手法を改正することになった。2024年より実施されたこの改正では、実勢価格との乖離率が1.67倍以上になる場合において、「相続税評価額×乖離率×0.6」で評価することになった。
戸建てにおける平均乖離率が1.66倍であるため、それを上回る場合には、「相続税評価額×乖離率」でいったん実勢価格に調整し直してから、さらに0.6掛けする(1÷1.66=0.6)ことで、戸建てとの格差を是正しようというわけだ。今回の算定方法はタワマンだけが対象ではなく、マンションの場合はすべてが該当することになる。
とはいえ、現金で持つよりも相続評価額を下げられることには変わりなく、相続後の売却も見込めば、タワマン購入による節税効果への需要は残り続ける。
ここまでの話を聞けば、世間で「タワマンは儲かる」と喧伝される理由もわかるだろう。しかし、絶対に儲かるうまい話などないことは投資の常識だ。取引価格が相場に左右されるのは株式と同じで、相場が安いときに仕入れ、高いときに手放すのが鉄則になる。特に投資額が大きくなるタワマンを買う際には、この鉄則をよりいっそう肝に銘じておく必要がある。
株式投資にはないマンション投資のリスク
株式投資と異なる不動産投資ならではのリスクとしては、流動性の低さがある。相場を見て「ここぞ」というタイミングで売却し利益を確定する、逆に「ダメだ」と思ったら損切りを行うことも投資の鉄則だが、タワマンは株式のように即日で売買が成立するものではない。
ボタン一つで済む株式市場とは異なり、取引に相応の時間がかかる。相場が悪くなり一斉に売りに出される事態に陥っても、商品単価が高いのですぐには買い手がつきづらいのだ。
しかも、不動産は個別性が高いので、同じ建物内の住戸であっても階数や方角、間取りなどが影響して選ばれない可能性もある。最悪の場合、相場が下がり始めて慌てて売りに出そうとしても、売れるまでの期間、どんどん下がり続けていくさまを指をくわえてながめるしかないのだ。この流動性の低さは、急な金利変動など経済環境の変化に対しても脆弱だ。
売買取引の際にかかる手数料もバカにならない。宅地建物取引業法上、規定されている仲介手数料は取引価格が400万円超えで3%、報酬には消費税が課せられるので実質3.3%になる。この料率はあくまでも上限値ではあるが、仲介手数料をケチると業者のやる気がなくなり、きちんと扱ってくれなくなるリスクがある。