手数料と税金の塊だという覚悟が必要

株式投資でも信託報酬などは取られるが、不動産は金額が大きいので、この仲介手数料にかかる額も多額になり、1億円の売買ならば税込みで330万円だ。この仲介報酬は売る場合にも買う場合にも同様に3%が請求される。

譲渡する場合の譲渡税も侮れない。自宅用であれば売却金額から取得費用等を差し引いた譲渡所得に対して3000万円まで控除されると先述したが、通常は自宅として居住していない限り、この特例は利用できない。住民票があることは必須で、なかには住民票を移して偽装する人もいるが、実際に居住している形跡が確認できないと否認されるケースが多い。

これらに加え、売買契約書締結にあたって印紙税がかかるほか、住宅ローンを組んでいた場合、期日前返済に関わる手数料、抵当権抹消費用などもかかる。

このように不動産取引は手数料と税金の塊なのだ。したがって、売買によってある程度の利益をつかめたと思っても、意外にも仲介手数料その他の譲渡費用でかなりの部分が相殺されてしまう。

「タワマンで金儲け」は簡単ではない

さらに不動産という商品は、時間の経過とともにそれ自体の価値が劣化していくという特徴を持つ。古くなる建物の価値を維持するために修繕費用が嵩むし、周囲に競合する建物(商品)が出てくれば競争が激しくなり、売却額を下げる必要が出てくる可能性がある。

牧野知弘『家が買えない 高額化する住まい商品化する暮らし』(ハヤカワ新書)
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運用益を見込んで賃貸に供しても、借り手がいなければ話にならないため、当初は見込めていた高い利回りが続く保証などない。

2010年代後半から今にいたるまでは、かなり高いパフォーマンスを示してきたので、実際に得をした人が多いのは事実だが、どの金融商品もそうであるように、これまでの成功がこれからの成功を約束するものではない。

私がタワマン購入を検討されているお客様に、売却を前提に出口戦略を考えておくよう勧めるのは、こうした点があるからだ。それを承知のうえで買うのならば、金融商品同様に、不動産マーケットの動向に加え、金融マーケットの動向などにもよく目を配って、即座に売買ができる体制を保っていくことが肝要になる。

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