全員がタワマンに住んでいるわけではない

さて①から③までの購入者属性の特徴を一言で言うと、そのほとんどが「買うだけの人」であることだ。

富裕層の多くは、タワマン購入前から別に自宅を保有している人が多い。天守閣需要で買っている地方富裕層などは、買ったタワマンの部屋を迎賓館や社内保養施設として扱っている例が多い。

東京や大阪のフロー金持ちの場合は住んでいることも多いが、軽井沢や箱根に別荘を持ち、二拠点生活のうちの一つとして買っていたりもする。投資家はもちろんのこと、節税対策をもくろむ高齢者にいたっては、相続が起こることを前提とした買い物であるため、そもそも居住する意思など最初からない。

④パワーカップル

最後に残った第四の購入者が、主な「住んでいる人」になる。世間がもてはやす「パワーカップル」だ。パワーカップルに明確な定義はないが、ニッセイ基礎研究所では夫婦それぞれが年収700万円以上ある世帯としているので、おおむね世帯年収1500万円超えの共働き夫婦を指すものとされる。

彼らがタワマンを購入する理由は、会社通勤がしやすい都心部にあって、交通利便性が高いことにある。世帯年収が1500万円ほどもあれば、35年返済の夫婦ペアローンを組むことで、現行金利水準が続く限り1億円ほどかかるタワマンでも買うことができる。

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日本人の資産格差の象徴的存在に

タワマン購入者のうち「住んでいる人」というのは、実は多くがこのパワーカップルなのだ。プライドや見栄で買っている富裕層、運用益や売却益を狙う国内外の投資家たち、相続を終えたらお役御免で売り払うつもりの高齢富裕層といった「買うだけの人」を除けば、数がしぼられてくる。

この構造からすると、都心マンション、とりわけタワマンは、もはや住むためのものではなく、投資や節税手段としての対象となっていると言っても過言ではない。買って住んでいるパワーカップルたちのなかにも、ゆくゆくは売却してあわよくば多額の売却益を享受しようと考えている者もいるし、それで実際に成功した人たちもいる。

野村総合研究所の調べによれば、2021年において純金融資産(不動産を除いた金融資産のうちローンなどの負債を除いた額)で1億円以上を保有している世帯は、全国で約149万世帯も存在する。しかも、その数は年を追うごとに伸びている。

今後さらに日本人の間で資産格差が広がると言われているが、タワマンはこのうちの富裕層に向けて供給する商品であり、今後もこうした人々によって支持されていくものなのである。