15歳の時に“道”は見えていた

2006年には、自ら企画書を書き、ソロ・プロジェクトENDLICHERI☆ENDLICHERIを開始。特設会場を作り、約半年の間になんと100本ものライブを行った。このプロジェクトでは、作詞作曲のみならず、宣伝手法まで考えるようになり、近年では「自分で全部やってる。(中略)プレイヤーとしても、エンジニアとしても、アレンジャーとしても」(※20)と言うほどで、ライブ演出はもちろん、例えばロゴをデザインする上でのフォントづくりに至るまで自らの手で行っている。

ファンクの帝王ジョージ・クリントンともセッションを果たし楽曲を制作するなど、その音楽性は国内外のミュージシャンたちからも認められている。

2000年代を境目に、堂本光一はミュージカルに、堂本剛は音楽の道に邁進していく。ただ、2人ともその道に進むきっかけが、ジャニー喜多川によって与えられていることに、本当に自己プロデュース性があるのか、と疑う人もいるかもしれない。だが、もちろん彼らの道は“進まされている”ものではない。

世間の注目を浴び始めた15歳の頃、将来のことを聞かれ2人がこう答えていたことがある。

「歌、ダンス、演技、ぜんぶ好きだから、将来はミュージカルをやるのが目標」(堂本光一)
「いま、暇をみて詩を書いてるんだけど、いつか自分の作詞した曲を歌えたらいいなと思っています」(堂本剛)(※21)

なぜわざわざ“命令の形をとったか

驚くほどに、彼らは少年の頃に描いた自分たちの理想の道を歩いているのである。ジャニー喜多川が各々に対して“指示”の形をとったのは、“ジャニーズ史上初”のことをすることになる2人に対して、失敗の可能性も鑑みた上で責任を取るためだったのかもしれない。自分の頭で考えさせ、各々のやりたいことができるような環境を整えた上で、責任は自分が取れるように“命令”の形にする――。

霜田明寛『夢物語は終わらない 影と光の“ジャニーズ”論』(文藝春秋)

堂本光一は、ジャニー喜多川の死後、その思いにこう考えを巡らせる。

「ジャニーさんって、いろんな人の責任をどれだけ背負っていたか、ってことなんですよね。(中略)全員がジャニーさんのせいにできたんですよ。〈ジャニーさんがこう言ってるから〉とか〈ジャニーさんの指示だから〉って。ジャニーさん自身も、その責任を全部背負ってくれた。でももう、それができなくなったんですよね」(※22)

ジャニー喜多川はKinKi Kidsのことをこう評していたという。

「100年にひとりの逸材がここには2人いる」(※23)

その逸材を芸能界の中だけで埋没させるわけにはいかなかったのだろう。デビューまで時間をかけ、多くの番組に出演して知名度を高めながらコンサートにも集客し、大ブレイクすると、徐々にテレビ露出を減らし、芸能界で生きることから芸事に集中できるよう道を整えていった。その結果、結成から30年経ってもKinKi Kidsは走り続けているのである。

※1:TOKYO FM『木村拓哉 Flow』2024年8月11日放送
※2:「AERA」2023年1月23日号
※3:「週刊SPA!」2004年1月13日号
※4:「スポーツ報知」2023年1月1日
※5:TOKYO FM『木村拓哉 Flow』2021年11月21日放送
※6、7:「スポーツ報知」2023年1月1日
※8:TBS『日曜日の初耳学』2023年1月22日放送
※9:「MEKURU」VOL.7
※10:「女性セブン」1995年4月6日号
※11:TBS『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』2022年7月1日放送
※12:テレビ朝日『関ジャム 完全燃SHOW』2017年8月27日放送
※13:「音楽と人」2018年2月号
※14:「女性セブン」1995年4月6日号
※15:「AERA」1997年3月24日号
※16:「日経エンタテインメント!」1997年11月号
※17:TBS『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』2022年7月1日放送
※18:「女性自身」2015年3月10日号
※19:「音楽と人」2023年3月号・「サウンド&レコーディング・マガジン」2019年10月号
※20:TBS『人生最高レストラン』2023年9月9日放送
※21:「an・an」1995年2月24日号
※22:「音楽と人」2021年1月号
※23:TBS『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』2022年7月1日放送

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