表面的な知識ではなく、本質をしっかりとらえ、「ドラえもんを科学者視点でどう判断するか」というこの応用問題。大いに気になるのは、その解答である。「簡単だよ、生物として認められないのはロボットだから」と考えた読者もいるだろう。残念ながら、それでは不正解である。「その回答では問題文の内容を言い換えたにすぎない」(松谷さん)
実は、ドラえもん問題は理科の大問2の問7として出題され、同じ大問の中にヒントが隠されている。大問2の問題文には地球上の「生物」に共通する特徴として、以下の3つがあげられている。(1)「自分と外界とを区別する境目をもつ」、(2)「自身が成長したり、子をつくったりする」、(3)「エネルギーをたくわえたり、使ったりするしくみをもっている」
これらをしっかり読んで解き進めれば、「ドラえもんの場合、(2)の『自分自身の成長や生殖』という項目に該当しないから生物ではない」ということになる。
松谷さんによれば、同塾の麻布中合格者の多くは、このように記述をしたという。
一方で「漫画やアニメのキャラクターで、世の中にはもともと存在しないから」や「4次元ポケットなど秘密道具を持っているドラえもんに3次元である生物の条件をあてはめるのは難しい」といった子供らしい解答例もあったが、これらは科学者としての視点に欠けるのだ。
「この問題は見た目こそインパクトがありますが、それほど難解ではありません。合格ラインに乗せるには、この問題を落としてはいけません。ある意味、このドラえもん問題が合否を決めるモノサシだったと言ってもいいでしょう」(松谷さん)
「大人もてこずる難問」とインターネット上で話題になったにもかかわらず、麻布などの上位校を目指す子供にとっては比較的易しかったことを証明する出来事があったそうだ。