ロンドンで「髪がなびく写真」をアップした一人の女性
家父長制は抵抗に遭いながらも、なぜ長く続いてきたのだろうか。21世紀の私たちは、そう疑問に感じずにはいられない。
女性たちが変化を求めて懸命に闘い、平等を求める革命闘争に参加してきたにもかかわらず、いまだ平等が実現しないのはなぜなのか。いったい何が、家父長制という抑圧をこれほど強力なものにしているのだろうか。
今日、率直な発言をするイラン人フェミニストの多くは、イランでは安全に暮らせないと感じている。ジャーナリストのマシフ・アリネジャドもその一人だ。小作農家の孫娘で、労働者階級の出身である彼女は、ティーンエイジャーの頃に、政治パンフレットの作成に関わったとして短期間拘置され、取り調べを受けている。
その後、アリネジャドはテヘランの報道記者として、イランの政治指導者に時に面と向かって立ち向かったことで知られるようになった。現在はニューヨークに住み、ベールの着用義務に反対する国際キャンペーンを展開している。
「じつは、ヒジャブの着用強制への反対運動を立ち上げようと最初から計画していたわけではありません」とアリネジャドは言う。
始まりは2014年。彼女がロンドンの通りで、ベールを被っていない姿で自撮り写真を撮って、それをソーシャルメディアに投稿したことだった。髪が風に揺れる単純な感覚に感激したのだという。その瞬間、オンライン上で水門が開いた。イラン全土で同じことをする女性が増えていったのだ。
「小さな布を被らなければ、女性は存在できない」
2018年には、ヒジャブの強制に抗議した女性29人が逮捕されたと報じられた。2019年には、イランの司法当局がアリネジャドを特に名指しして、ベールを被っていない女性の動画をオンラインで共有した者を最長10年の禁錮刑に処すと発表した。
2020年には、モジガン・ケシャヴァルズ、ヤサマン・アーリヤニ、その母親のモニレ・アラブシャヒという3人の活動家が、テヘランの地下鉄でベールを被らずに女性客に花を配ったとして投獄された。
そして2022年9月、22歳のマフサ・アミニが「ヒジャブのつけ方が不適切」だとしてイランの道徳警察に拘束されたあとに死亡したことを受けて、イラン全土で抗議デモが勃発した。数週間のうちに、10代のニカ・シャカラミを含む数百人が負傷または死亡した。女子生徒や女子大学生たちは、ベールを脱ぎ捨て、座り込みの抗議を行った。
「彼女たちはなぜ抗議をするのでしょう。なぜなら、彼女たちはすでに政府から不当に扱われているからです」とアリネジャドは言う。
女性や少女は、声を上げるかどうかに関係なく、ベールのつけ方が不適切だとか、「控えめな」服装をしていないといった理由で批判される屈辱を日々受けている、と彼女は言う。2021年8月には、ある男性が、ベールを適切に被っていないと感じた女性2人を車で轢き、重傷を負わせたと報じられた。
「女性は毎日のように路上で道徳警察に殴られています。この小さな布を被らなければ、あなたは存在できません。女性にとって、以前はそう言われるだけで十分でした……でも、今はうんざりしています。宗教独裁に心の底から嫌気がさしています。宗教に身体のことを決められるのは耐えられません」とアリネジャドは話す。