基本的ながんの進行、5つのステージとは?
がん腫の進行は上皮からの浸潤の程度でステージを分ける。上皮はいくつかの層に分かれている。管の最表面に上皮細胞層、その下に基底膜があり、筋肉(平滑筋)の薄い層がある。さらに一番外側には漿膜というソーセージの皮のような薄い膜がある(図表2)。
がんのステージは、ローマ数字で0期からIV期まである。その分類は、臓器ごとに腫瘍の大きさ(T)、リンパ節転移の有無(N)、遠隔臓器への転移(M)の組み合わせで決まっているが、基本的には、図表2に示すように、粘膜上皮のすぐ下の基底膜から顔を出しているか(I期)、漿膜を破っているか(II期)、リンパ節転移があるか(III期)、遠隔臓器に飛び火しているか(IV期)によって分けている。
がんの中には、予後の良いがんもあれば、悪いがんもある。ステージ別の典型的ながんの5年生存率の推移を図表3に示した。いずれのがんも、ステージの進行にしたがって生存率が落ちてくる。なお、以下に示すABCDの分類は、説明をわかりやすくするために、著者が類型化したものである。
A 前立腺がん型:I期からIII期までは80%以上の生存率であるが、IV期には50%まで落ちる。がんのなかでは、最も良好な治療成績である。
B 大腸がん型:I期からIII期まで80%から60%台まで緩やかに生存率が落ちるが、IV期になると20%まで低下する。このタイブのがんとしては、子宮がん(頸部、体部)がある。乳がんもIII期までは同じ傾向をたどるが、IV期は40%近くである。
C 胃がん型:I期からIII期まで80%から40%台まで下がるが、IV期はさらに10%以下になる。このタイプのがんが最も多く、肝臓がんが同じ傾向を示す。
D 膵臓がん型:I期でも40%、IV期になると1.5%にまで低下する。最も厳しいがんである。食道がん、肺がんは、IV期が5〜10%の生存率と膵臓がんほどではないが、厳しいことに変わりがない。胆管がんと胆のうがんは、膵臓がんと同じくらい悪いと言われているが、I期、II期で手術可能であれば、治療成績は80%以上である。
図表3に見るように、どんながんでも、ステージが進行すると治療成績が悪くなる。内視鏡手術によって、早期の胃がんが治った人は多いため、ともすると胃がんを軽く考えている人がいるかもしれないが、進行すると、5年生存率は8%まで低下するのだ。
白血病など、血液のがんは、どこかの組織に局在しないので、細胞の種類などによって分類する。