60歳以上になると、歳を取るごとに9%も死亡リスクが増える

死亡ランキング上位の死因について、「べき乗則」分析をした。その結果、すべて「べき乗則」にしたがい、その指数は5前後にあることがわかった(図表2)。例外は、老衰の17.9である。年をとることが前提にあるので、これは当然であろう。

多くの自然現象と比べると、指数(絶対値)は非常に大きい。このことは、年齢を積み重ねるにしたがい、病気になる要因、ターゲットが積み重なっていくことを物語っているのであろう。

この指数値を使って、加齢とともに、疾病のリスクがどのように増加するかを推測することができる。たとえば、60歳の人が61歳になったとき、どのくらい、がん、循環器病(心疾患、脳血管障害)のリスクが上昇するかを考えてみよう。指数を5.0とすると、

(60/61)5.0=1.0175.0≒1.09 (※)5.0は小文字の指数

すなわち、がんも心筋梗塞も、60歳のときよりも、ほぼ9%リスクが上昇することになる。1歳としをとると、9%もリスクが上昇するのだ。死亡のリスクは考えられないくらいの高利回りである。

もちろん、この数字はポピュレーション全体のリスクなので、個人のリスクではない。しかし全体としては毎年、9%もリスクが上昇するのだ。いま健康であるかどうかにかかわらず、毎年1回は健康をチェックするのがいかに大切かがわかるであろう。

出典=黒木登志夫『死ぬということ』(中公新書)

肥満度を見ると、「小太り」が一番長生きするが…

肥満の程度を表すのにBMI(Body Mass Index)という指標がある。体重(kg)を身長(m)で2回割ると得られる。日本では、BMI値が18.5から25を普通体重、18.5以下を瘦せすぎ、25以上を肥満と呼んでいる。

しかし、WHOの基準では、BMIが25〜30は肥満とはいわず、太りすぎ(Overweight)である。WHOの肥満(obesity)はBMIが30以上である。BMI30以上の男性は、日本では2.8%にすぎないが、アメリカ人男性ではその10倍、28.1%に達する。

日本の7つの追跡調査の35万人以上のデータをプールし、BMIの水準と10年以上にわたる死亡率を追跡したデータによると、図表3に見るように、BMIと死亡率の関係はU字型になる。つまり、痩せすぎも肥満と同じように死亡率が高い。

死亡率が一番低いのは男性ではBMI23~27、女性では21~27である。つまり「小太り」くらいの方が死亡率が低いのだ。痩せすぎも健康によくない。特に妊婦の痩せすぎは子どもに影響する。

出典=黒木登志夫『死ぬということ』(中公新書)