素人の個人投資家は「ババ」を引くリスクが高い 

私は、子どもや若い世代を中心とした金融教育に力を入れていますが、ビジネスパーソンの皆さんも初心に返って、「なぜ投資をすると儲かるのか」を一緒に考えてみましょう。

企業は、投資されたお金を元手に新しいモノやサービスを生み出します。それらを購入する将来の消費者が支払う代金を企業が受け取り、その一部が投資家へと還元されるわけです。

株は出資金を小分けにして、株主が企業の共同オーナーとなる投資システムの一つです。上場株には、配当という利益還元だけでなく、株価の「値上がり益」もあります。企業の利益の見通しが変わらなくても、上場株の株価が刻々と変動するのは、この「値上がり益」を求めて、投資家が売り買いを繰り返すからです。

そこでは、皆が「安く買って高く売る」ことを目指しますが、それに成功するのは半数だけ。残り半数は必ず「高く買って安く売らされる」のです。株式市場には、プロの投資家が大勢参戦しているので、素人の個人投資家が「ババ」を引くリスクが高いです。

為替相場についても考えてみましょう。通貨の価値も、需給バランスで変動します。ドル(米ドル)を買って円を売る動きが強まれば、「円安ドル高」が進行し、その逆の動きが強まれば、「円高ドル安」になります。

日本では、小麦や原油の価格高騰などによる貿易赤字が拡大し、ITの普及によって、米国ビッグテックへの支払いなど「デジタル赤字」も増加しているため、円を売り、ドルを買う必要性が高まっています。一方で、円安でも輸出できる魅力的な製品が減っていて、インバウンドによる観光収入も頭打ち。十分な外貨が獲得できず、円の価値が高まらないのです。

さらに、新NISAでの海外投資による「家計の円売り」は、24年前半のみで6兆円以上と試算されています。新NISAが「円安やインフレの対策」と言っても、個人投資家のドル買いが加速すれば、それだけ円安に拍車をかけます。一方で、貿易決済でも、需要に見合うだけのドルを確保せざるをえません。その結果、消費者の立場として日本国民の多くは高いレートでドルを買わされる羽目になり、物価高に苦しむわけです。