日本が投資対象にならない理由

一方で、日本が投資対象にならないのは、「日本経済が成長していないから。成長しなかったのは投資しなかったからだ」といった論調も目立ちますが、私は違和感を覚えます。

かつての日本の経済成長期を思い出してください。銀行預金の金利が、7〜8%もあった時代がありました。その時代は、銀行が企業に融資し、企業が銀行に金利を払い、金利の一部が預金者に還元されるという金融の仕組みが成立していました。金融機関が主力産業に融資していれば、日本経済は成長していたわけです。つまり、個人が投資をしなくても、銀行に預金しておけば、十分に資産運用できたのです。

しかし、いまは日本の人口が減って市場も縮小し、経済成長が見込めなくなったことで、資金需要が少ないので、銀行も融資先がなかなか見つかりません。個人が投資する余地もないのです。

企業側が新規事業を始めたり海外市場を開拓したりするために、資金需要を増やそうとしない限り、日本経済が再び成長することはないでしょう。「投資対象となる新しい産業を育てなかったから、日本経済は成長しなかった」というのが、正しい説明でしょう。

また、新NISAでは「長期に積み立てを続ければ、為替変動リスクが分散されて、利益が最大化できる」というのが、拡販のキャッチフレーズのようです。たしかに、積み立ての期間が30年以上もあれば、「ドルコスト平均法(投資する金額を定期的に分割して投資すること)」で、為替変動リスクを吸収する効果が見込めるでしょう。

しかし、50代以上のビジネスパーソンやシニアにとっては、どうでしょうか。もし積み立ての期間が10年しかないとすると、為替変動リスクを吸収できず、タイミングが悪ければ、大きな損失を出す可能性があります。

言うまでもなく、投資は原則として自己責任。特段の理由がない限り、金融機関は責任を取りません。自分の資産は、自分で守らなければなりません。