なぜここへきて売れ行きが落ちているのか
米GMは、2025年までに世界で100万台のEVを生産する計画が実現困難になった。人員削減も行う。フォードは、カナダのオンタリオ州で計画していた大型EV向けの投資を見送った。同工場はガソリンエンジンを搭載した、ピックアップトラックの生産に活用する方針だった。米国でステランティスや日産も、人員削減などコスト削減に取り組んでいる。韓国では現代自動車がHVを拡充する方針だ。
そうした動きの背景には、EVの売れ行きの鈍化傾向がある。EVが売れにくくなった理由には、政府からの補助金がないとEVの価格が相対的に高いことがある。
一般的に、EVの生産コストの3~4割を車載用のバッテリーが占めるといわれる。欧米の大手自動車メーカーにとって、工場で消費する電力、人件費、工場用地、リチウムなど希土類(レアアース)を調達する場合のコストが比較的高いため、安価なバッテリーを入手することが難しい。
ドイツ、フランスは政府が補助金を見直し
一方、中国はEV関連の政策を実行し、急速にEVの生産体制を整備している。バッテリーでは世界最大手のCATL、完成車分野ではBYDや上汽通用五菱汽車(ウーリン)などは、政府支援の下で価格競争力を高めている。また、中国政府はEVなど“新エネ車”の販売補助金を引き上げて需要を喚起している。
財政状態が悪化傾向にある日米欧諸国にとって、中国と同レベルの購入補助金を支給することは容易ではないだろう。バッテリーなどのコストがかさむ分、日米欧でEVの販売価格はHVなど既存の車種を上回った。2023年12月、ドイツ政府はEV販売補助金を停止した。フランス政府もアジアで生産されるEVを購入補助金の対象から外し、欧州のEV販売は鈍化した。米国などでも物価上昇などを背景にEV需要は減少した。