株式特有の脆弱さを分散させるには

特に重要なのは、ファイナンス理論的には資産分散です。

何のために分散投資をするかといえば、景気・社会情勢・災害・地政学の異変に対して“異なる動きをする資産”に分散することで、突発的な異変に対して目減りしにくい資産運用を確保するためです。仮に、株式しか保有していないとなると、たとえ銘柄分散をしたとしても、景気悪化や地政学リスクに対して“株式特有の脆弱さ”によってもたらされるリスクを分散できません。

「有事の時のゴールド買い」「景気悪化に備えての債券買い」という言葉を聞くことがありますが、これは、社会的な異変に対するそれぞれの資産の強みを示した言葉でしょう。私は、この資産分散こそが、突発的なリスクに対して投資家が出来る最大の防御だと考えています。

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ただし、過去に世界の中央銀行によって行われてきた金融緩和の副作用として、最近では株式とコモディティの価格変動の同質性が強まっているとする研究報告もあります。ですから、株とコモディティだけでなく、不況時に強い債券も組み合わせる資産構成が重要になるでしょう。

新NISAで米国株だけに投資をしていた方は、あっさりと含み益が減少するのを見て驚いたかもしれません。こんな時だからこそ、資産構成を分散させる良い契機にして欲しいと思います。私も、今回の暴落で、円建て資産の見直しを行いました。

長期投資は本当にいつかは花開くのか

こうしたリスク分散の話をすると、「長期で保有し続けていれば、いつかは元に戻るよね。そうでしょう?」という相談を、本当にたくさん受けます。

私は、こうした質問がたくさん出てくるのは、「長期投資はいつかは花開く」という風潮が影響しているからだと考えています。

そして、この風潮こそが、私がモヤっとする原因です。

ここでいう長期投資とは、毎月定額でコツコツと投資をして、時間分散をしながら投資をしていくドルコスト平均法のようなイメージを指しています。なぜ、モヤっとするかといえば、長期投資は“必ず”花開くかのような言い方がされることが多いからです。

というのも、時間分散が資産運用において有効かどうかは、投資期間を通して投資対象の資産が「必ず正と負を交互に繰り返すという状況(=平均回帰性)」を維持することが前提になっているからです。しかし、すべての資産価格が長期間にわたって平均回帰性を持っているかは、私の見る限り、学術研究においても解明されていません。