景気テコ入れの「6兆円の補助金」は「需要先食い」
一方で、まだ農村のキャッチアップが期待できる、あるいは都市・農村ともに普及余地が大きい耐久消費財には、農村のエアコン、都市と農村の自家用車などがある。エアコンや自動車を対象に、購入に対する補助金を支給するなどすれば、より大きな効果発現が期待できることになるということだ。
中国政府は2024年7月25日、超長期国債の発行によって調達する1兆元のうち3000億元(約6兆2000億円)を投じて、車・家電の買い替えや、企業の設備投資を促すための補助金を増やすと発表した。
消費に関連して、車ではEVなど新エネルギー車の買い替え補助金を1万元から2万元に、ガソリン車は7000元から1万5000元に引き上げた。家電では、エアコン、パソコン、冷蔵庫など8品目が対象で、2000元を上限に販売価格の15%(省エネ・節水基準レベル2以上)~20%(同レベル1以上)を補助し、個人は1品目で1回利用できるとした。
実は2024年5月以降、同様の家電購入補助金政策を導入する都市が相次いだのだが、その際は販売価格の10%が上限とされていた。7月25日の政策はこれがさらにパワーアップした格好だ。
こうした購入補助金政策は、当面の中国の消費を下支えするが、需要先食いの面があることは注意する必要がある。結局、景気テコ入れのために強力な政策を打てば打つほど、ツケを後年に残しかねない。
若年層の失業率が高止まり
2つ目の構造的な要因は3年にわたり維持された「ゼロコロナ」政策の悪影響であり、これは若年層の高失業率をもたらした。かつて毎月の給料を使い尽くす「月光族」と呼ばれ、消費性向の高かった若年層が、節約志向を強めているのだ。
若年層(16歳~24歳)の失業率は2020年以降のコロナ禍で大きく上昇し、2023年6月に21.3%を記録するなど、過去最高の更新が続いた。中国では大学の卒業者が毎年大きく増え、こうした人々が労働市場に参入する7月に若年層の失業率が跳ね上がる傾向がある。「卒業即失業」という言葉、あるいは卒業式のガウンを着用しゾンビ(あるいは死体)に扮した写真がSNS上でバズるなど、社会問題化していた。
こうした状況下で、当然、2023年7月に若年層の失業率がさらに上昇すると予想されたのだが、あろうことか当局は年齢層別の失業率の発表を取りやめてしまった。結局同年12月以降、発表が再開されたが、求職中の在学生を除くなど、従来と比べて失業率が低く出るように統計が変更されている。2024年6月の若年層の失業率は13.2%となったが、全体の5.0%と比べて著しく高い状況に変わりはない。