日本の女性の乳がんが増えている

国立研究開発法人「国立がん研究センター」のがん情報サービスのデータ(4)(5)によると、日本では、特に女性の早期発症がんが増えています(図表1)。

1990年から2019年における日本人女性の早期発症がんの10万人あたり罹患率の変化

35歳から49歳までの女性では、人口10万人対の乳がん罹患率が、日本人は米国人を上回ります(図表2)。

日米の年齢層別乳がんの10万人あたり罹患率の比較

米国でも、若年性がんの罹患率が増えています。米医師会雑誌の報告によると2010年から2019年にかけて、最も急速に増加しているのは消化器がんです。

中でも大腸がんは50歳未満の成人の間で、1998年は第4位にランクされていたにもかかわらず、現在では男性のがん死亡原因の第1位、女性では乳がんに次いで第2位となっています。さらに、患者は高齢者から中年へとますます移行しています(6)(7)

「若年層のがん」と「老化の加速」の関係

研究者たちはその理由を解明しようと躍起になっています。そんな中、今年4月の米国癌学会で、ワシントン大学医学部の研究者らは、若年成人のがんリスク増加と老化の加速が関連していることを指摘しました(8)

この2つの関連を調べるため、研究チームは、英国バイオバンクに登録された約15万人のデータを使用しました。バイオバンクは、英国の50万人の住民の情報を含む大規模な生物医学データベースです。

ところで生物学的年齢は、暦年齢に対して、その人の身体の状態を指します。研究者らは、血液中の9つのバイオマーカー(アルブミン、アルカリホスファターゼ、クレアチニン、C反応性蛋白質、血糖値、平均赤血球容積(MCV)、赤血球粒度分布幅(RDW)、白血球数、リンパ球比率)を分析し、参加者の生物学的年齢を算出しました。

すると、1965年以降に生まれた人は、1950年から1954年の間に生まれた人に比べて、生物学的年齢が年代より17%高まりました。

次に研究チームは、加速する老化と早期発症がん(ここでは55歳未満で診断)発症の可能性との関連を調べました。その結果、身体の老化が早ければ早いほど、肺がん、消化器がん、子宮体がんの早期発症が高まりました。また、晩発性の胃腸がんや子宮がんのリスクも上昇しました。