経産省は「着実に前進」と評価しているが…

2022年のレポートによれば、「DX推進の取り組みは着実に前進している」という。しかしながら、多くの企業がDX推進できる状態には至っていないことは明白だ。

①のデジタル投資の内訳は、守りの投資に約8割が占められている状況が続いている。当然攻めの投資も実行しているとは思われるが、それは既存システムの肥大化・複雑化を意味する。したがって、②の機能追加に伴うリリース期間が短縮されたとしても、工数を圧縮できるまでには至っていないだろう。

また、③ユーザ企業のIT人材比率は、以前と変わらず3割弱となっている。⑤のバリューアップの取り組みも1割未満に留まっており、④の平均年収が倍増していないことがうかがい知れる。

老朽化システムの維持に必要な費用が増え、新しいシステムへの投資が遅れることで技術的負債が増加するという構造的な問題がある。つまり短期的な修正を繰り返し、肥大化・複雑化した結果、長期的な視点でのシステム刷新がしにくくなっているのだ。

さらに、老朽化システムの運用・保守を長年行ってきた有識者が高齢化や退職の時期を迎えている。この問題はベンダー企業の人的リソースを逼迫させるだけでなく、ユーザ企業のメンテナンス費用をさらに増加させる。端的に言えば、これが日本企業の実態だろう。

「反面教師」となったみずほFG

よく引き合いに持ち出される「2025年の崖」問題の事例は、みずほホールディングス(現みずほFG)が老朽化した勘定系システムを使用し続けて二度の大規模システム障害を引き起こしたシステム刷新だろう。

そもそも、みずほFGは、旧第一勧業銀行、旧富士銀行、旧日本興業銀行の経営統合により誕生した。問題となった勘定系システムは1980年代に構築されたシステムであり、経営統合を機にシステム刷新と統合の計画を立てていたが、リテール業務の減少に伴い、計画は遅々として進まなかった。

その結果、2002年4月と2011年3月に大規模システム障害を起こし、2019年に新勘定系システム(MINORI)に移管した後も2021年2月からの1年間で11回のシステム障害を起こしている。