人民元は基軸通貨でも何でもない
【エミン】中国の場合は、債務を払えなくなったスリランカに対して、ハンバントタ港の99年間のリース契約を結んだものの、中国軍を侵攻させて包囲するようなことはしない。経済制裁にしても、例えば中国は米国のように、「国際銀行間の送金や決済に利用される安全ネットワークのSWIFT(国際銀行間通信協会)から排除するぞ」とスリランカ政府に対して脅しをかけられない。
【大橋】結局のところ、依然として人民元は基軸通貨でも何でもないのです。たしかに中東諸国との原油売買の決済を、ドルでなく人民元にするという話が五月雨的には出てきてはいます。
しかしながら、このところの人民元レートは1ドル=約7.2元と2007年以来16年ぶりの“安値圏”をさまよっています。
加えて、米国債の保有額を減らし続けているのは、中国政府が人民元を買い支えするためだという見方が有力なのです。なんだかんだ言っても、ドルが強いことは確かだと思います。
米国は「日本重視」に路線転換した
【大橋】ここまで語り合ってきたように、このところ中国の経済運営に失敗とほころびが目立ってきたこと。もう一つ、欧米とりわけ米国がジャパンバッシングの時代から、中国と対峙するフェーズへと移行するなか、今度は日本を同盟国として、ことさらに重視する路線に確実に転換したことは大きいですよね。
【エミン】そのとおりです。路線転換の意味は大きい。
【大橋】日本はバブル期の1989年に、米国の象徴だったロックフェラーセンターやコロンビアピクチャーズなどを次々と買収し、米国の逆鱗に触れてしまいました。
その4年前の85年には、「プラザ合意」でドル高是正に動いたため、日本は急激な円高を強いられました。米国はさまざまな政策転換により、日本を追い詰めようとしました。
【エミン】そうでしたね。
【大橋】いまは1ドル=150円を超える円安ドル高となっても、何も文句を言いませんね。
米国は、日本が再び強い経済を取り戻すことを許容した。つまり共に中国と戦いましょう、と日本に協力するというスタンスへの大きな転換がなされたとも考えられますね。