チケット一枚自分で買えない木下に嫉妬していた

それ以来、「木下は木下が思うまま生きればいい」と放任。ややこしいことはぜんぶ僕が引き受ける役割分担でずっとやってきました。

彼は生活全般において、ふつうの人ができることがなにもできません。ご飯も一人で食べに行けないし、新幹線や飛行機のチケット一枚すら自分で買えません。そんなのは僕がやるし、教えるから、「お前は楽しんで自由に生きて欲しい」。その代わりに「いつもおもしろくおってくれ」と伝えていました。それが、二人の共通認識だったのです。

でも、お互いにピン(単独)の仕事が増えてくると、コンビで合流したときに、僕の中にだんだん「俺はこんなに考えてやっとんのに」という気持ちが強くなってきました。もちろん木下も忙しく仕事をしていますから、僕が支えなければいけないことは重々承知していました。

ですが、僕も自分のことしか考えられないようになって、「俺だって、楽しく生きたいわ」という思いが強まります。そうなると、木下に対して「なんで飛行機のチケット一枚買えへんねん」という気持ちがフツフツと湧いてくるようになる。

「きちんと謝ったか」の確認を怠った

TKOの原点は、「俺が4人きょうだいの長男、あいつは4人きょうだいの末っ子。だから俺たちはバランスよくマッチングするし、ウマが合うんだ」でした。そのはずが、だんだん僕の我が大きくなり、木下を受け止める器がどんどんと小さくなってしまった。

逆に、外部で新たに出会う人たちに、僕の器が大きく見えるよう振る舞って行くようになっていました。そんな、僕の人間としての容量の少なさが、コンビが転落するきっかけを作りました。木下がペットボトルを投げた直後に、篠宮にきちんと謝罪させておけば、そこまで大きな騒動にはならなかったはずです。

「きちんと謝らんといかんで」と、木下には強く進言しました。でも、木下が行動するかどうかの確認を僕が怠ってしまいました。後輩たちに、「人としてとうぜんのことをきちんとやれ」と普段から口すっぱく発言している当人が、その教えを徹底できなかったのです。