「低金利だから株価が上昇した」わけではない
そもそも株価がどうやって決まるのか、ご存じだろうか。
基本的には、企業の将来の収益予想を金利で割ったものが株価になる。具体的には、「予想収益÷金利=株価」という式で表される。金利が5%なら0.05での割り算、つまり20倍の掛け算と同じだ。計算式は「予想収益÷0.05=予想収益×20」となる。金利が低下すると、分母が小さくなり株価も上昇するというメカニズムだ。
無知なテレビのコメンテーターやエコノミストは、金利の低さだけで株価上昇を説明しようとする。しかし、そういう短絡的な話ではない。日本は低金利時代が長らく続いてきたから、それだけで株価の上昇は説明できない。「アベノミクスで企業収益が上がるだろう」と予測した投資家が、こつこつ株式を買っていたから、それに比例して株価が上昇したというのが正確だ。
また、「日銀が株式を買っているから株価が上がった」という人もいる。たしかに日銀は日本の上場投資信託(ETF)を買い取っていたが、実際に株価が上昇し始めたのは2020年10月からであり、日銀のETF購入と株価上昇には直接的な関係はない。
それに、日銀が積極的にETFを購入していた時期、日本の国内株式の時価総額は約700兆円だった。そのうち、日銀の購入金額は6兆円で全体の株価に対して1%未満だったため、購入額を少し増やしたところで株価全体には大きな影響はなかった。
株式に手を出すなら算数や数学の知識が必要
株式に関する誤解が生まれやすいのは、日本ではそれについての教育が不足しているからだ。株式投資を真剣に学ぶなら、割引率などの基本的な算数や数学の知識が必要だ。
例えば、高校の数学で学んだ数列も株式投資に応用できる。「連続する項同士の比が常に等しい」という等比級数の公式を覚えるだけではつまらないが、金融や株式の事例を交えて説明すれば興味が湧いて理解も深まるだろう。
算数や数学の知識は実生活でも役立つため、投資に興味がある人はぜひ勉強してみることをお勧めしたい。
ただし、株式投資では、投資先の企業の内情を全て把握できるわけではないので、不明点やリスクもある。そう考えると、これまで自分の仕事で培ってきたことに関わる事業へ投資するほうが、わかりやすいし賢明かもしれない。