細菌やウイルスが中に入れない仕組み

講演などでこの話をすると、「生産時に無菌なのは分かったけど、出荷後の保管中にボトルの外側から悪い菌が入る可能性があるのでは?」という質問を受けることがあります。ですが結論から言えばその可能性もゼロです。外気中に漂っている菌がペットボトルの中に入り込む可能性はありません。これはペットボトルの容器が細菌やウイルスを絶対に通さない性質を持っているからです。

この性質を例えて言えば「蚊が網戸を通過できない」のと同じです。意外に聞こえるかもしれませんが、ペットボトル容器は「すき間が全く無い」から細菌やウイルスを通さないのではなく、「実はすき間はあるけれど」細菌やウイルスのほうが大きいから中に入れない仕組みなのです。

ペットボトル容器には通気性があると言われます。これはペットボトルの素材に使われているポリエチレンテレフタレート(PET)にはわずかに気体透過する性質があり、気体の分子となると通れてしまいます。これはペットボトルに限らずプラスチック素材全般に言えることで、ニンニク漬けの食材が入ったビニール袋からニンニクの匂いがしてくるのはそのためです。ニオイの粒子が目に見えない穴から出てしまっているわけです。

しかし、この穴はとても小さいため、サイズの大きなウイルスや細菌は通れません。飲み口部分の「密封」もキャップとボトルが完全に密着することで侵入できない状態が保たれています。

写真=iStock.com/Edwin Tan
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なぜ「腐らない」のに賞味期限があるのか

以上のことから、「絶対に菌が入れない容器に、無菌の飲料が入っているんだから当然、腐らない」という理屈が完成しました。そうなるとここで、大きな疑問が湧いてくるはずです。それは「腐らないのにどうして賞味期限があるのか? 一体何の期限なのか?」という疑問です。

ミネラルウォーターであれば一般的に2年、お茶やジュース類は6カ月~1年程度が賞味期限として設定されていますが、「腐らない」のであれば砂糖や塩のように賞味期限が設定されていない商品にできるはずです。それなのになぜ賞味期限があるのか。実はその答えは、先ほどお伝えした「ペットボトル容器には通気性がある」と関係しています。

まずミネラルウォーターの賞味期限ですが、これは「穴のせいで中身の水が徐々に減る」ことを考慮して設定されています。実は水の分子は、ボトルにあいた超極小サイズの穴よりも小さいため、非常にゆっくりですがボトルを通過してしまうのです。そうなると当然、徐々に中身が減っていくことになりますが、実は量が減り過ぎると販売時に法律違反になるという事情があるため、そうなる前の日付になるように賞味期限が設定されているのです。

この法律は「計量法」というもので、例えば2Lペットボトルであれば1%(20ml)、500mlペットボトルであれば2%(10ml)以上減ったものを販売してはならないというものです。