非常用10年保存水のカラクリ

つまり、ミネラルウォーターの賞味期限は「計量法違反になるかどうか」だけで設定されている期限なのです。実際に消費者庁も以下のように回答しています。

※消費者庁食品表示企画課「食品表示基準Q&A」(総則-24)

(問)「賞味期限」とはどのような意味ですか。また、食品を購入した後、家庭等で保存中に「賞味期限」を過ぎた場合には、どのようにすればいいのですか。
(答)「賞味期限」とは、定められた方法により保存した場合において、期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日のことであり、「賞味期限」を過ぎた食品であっても、必ずしもすぐに食べられなくなるわけではありません。また、それぞれの食品が食べられるかどうかについては、その見た目や臭い等により、五感で個別に食べられるかどうかを消費者自身が判断し、調理法を工夫することなどにより、食品の無駄な廃棄を減らしていくことも重要です。

そもそもミネラルウォーターは水の分子とミネラルだけで構成された(有機質を含まない)無機質の飲み物なので、腐敗や劣化をする物質が含まれていません。したがって容器が変形したり衝撃を受けたりして破損していない限りは何年期限を過ぎようが飲むことができるのです。

もちろん、賞味期限を何年も過ぎてくると中身の水が減ってボトルがどんどん凹んでくるので、その変形によってボトルが破損して中身が外気に触れてしまうリスクがある点には注意が必要です。これはお茶やジュースのペットボトル飲料にも言えることです。

ちなみに防災グッズとしてよく売られている5年保存や10年保存のペットボトル水は、中身が蒸発しにくい特殊な素材を使うことで5年経っても、10年経っても計量法に違反しない量をキープしています。

水
写真=iStock.com/South_agency
※写真はイメージです

賞味期限は食品・飲料メーカーが決めた「おいしさの期限」

次に、お茶やジュース類などの賞味期限ですが、こちらは「計量法」違反が気になってくるよりももっと前のタイミングで「変色したり味が落ちたりしてくる」ために賞味期限が設定されています。

先ほど紹介したペットボトルの超極小サイズの穴は、水分子だけでなく、酸素や二酸化炭素もゆっくりと通してしまいます。外の空気に含まれている酸素がゆっくりと中に入ってくることで、お茶やジュースは徐々に「酸化(劣化)」して味が悪くなるし、逆に炭酸飲料は炭酸(二酸化炭素)がだんだん抜けていき、最終的には「無炭酸のおいしくないジュース」ができ上がります。ですので、そうやって「おいしくない商品」になってしまう前の日付に賞味期限が設定されているわけです。