平均賃料は今年も下落か

オフィスマーケットは都心5区の平均空室率が6%台で高止まりの状況にあるが、今年は延床面積で1万㎡を超す大規模ビルの供給が少なく、コロナ禍後のオフィス床の借り戻しが一定数見込めることから、小康状態が続くものと予想する。ただし、新規のテナント需要に限りがあり、最近竣工する新築オフィスビルのテナントの多くが周辺ビルや施主であるデベロッパーの既存ビルなどからの引き抜きで埋め合わせる傾向が強く、引き抜かれたビルでの2次空室発生の問題は顕著になると考えられる。したがって提示している賃料水準を下げて引き抜く、あるいは表面賃料は変えずにフリーレントという一定期間の賃料免除を施すことで実質テナント賃料を引き下げるなどの動きが続くことから、平均賃料の下落は今年も止まらないことが予想される。

さらに二極化が進む住宅マーケット

住宅マーケットはどうなるだろう。2023年に顕著になった傾向としては「価格の高い物件しか売れない」法則だ。既にマンションは郊外部での新築マンションは土地代の上昇に建築費の高騰が重なって、郊外部のマンションにしか手が届かない顧客を中古物件に向かわせてしまった。戸建て住宅も低価格で取得できたはずの郊外部で販売在庫が積み上がり、もはや一般庶民では新築住宅を買うことは不可能な様相が続いている。高額帯を購入する富裕層は、価格の上昇を吸収できる余裕があるし、投資用に買う顧客からみれば短期間で売却するので、値上がりさえすればよいし、相続対策で購入する顧客にとっても販売価格の高さはあまり痛手に感じないのだ。

そうした意味で今年は住宅マーケットでさらに二極化が進む年になりそうだ。日本人社会の格差拡大で高額帯のマンションは好調を保つものと予想する。ただし、年内の金利動向によっては住宅ローンの基準金利になっている短期プライムレートの上昇があると、普及帯の新築マンション、戸建て住宅は大きな影響を受けそうだ。そればかりでなく、昨年までの間でペアローンなどを使ってかなり背伸びをした変動金利のローンを組んでいる既存所有者でローンの返済が叶わなくなる層が続出することも予想される。当然ローンが返せなければ売りましょう、ということで中古マーケットに大量に出回るようなことになるとその影響は小さくないだろう。

加えて、今年は約10年にわたり好調を謳歌してきた不動産マーケットに見切りをつけ、いったん売却して利益を確定させたい投資家の売りが重なるリスクがあることを指摘したい。なぜなら投資家は金利動向に非常に敏感だからだ。政策金利の変更、つまり利上げは不動産価格の下落を想起することにつながり、早めにエグジットしようとの動機が生まれるのだ。