ヤクザによる「美人局」はなくなってきている

秋葉原のメイドカフェに勤める交際相手の女性店員をめぐって、同店の29歳の男性オーナーから現金200万円を脅し取ろうとしたとして、稲川会系幹部の男が2020年6月、警視庁に恐喝未遂の疑いで逮捕された。組幹部の男は2019年11月、この女性店員をめぐってオーナーとトラブルになっており、「ヤクザの女に手を出したら分かってんだろうな」と脅していた。

SNSが幅広く利用されるようになった近年では、出会い系サイトやマッチングアプリなどで知り合った女性と交際を始めようとすると、暴力団関係者と見られる男が登場するといった現代版の美人局つつもたせもあるが、ある組幹部は否定的だ。

指定暴力団幹部「美人局のような事件は、最近は身近でほとんど聞かなくなった。そもそも、引っかかった男の前に自分の姿を晒さなければならないから危険は多い。ヤクザの『恐ろしさ』を見せつけることになる。いまとなっては利口ではない。ハイリスクだ。オレオレ詐欺のほうが安全にカネを取れる。」

ヤクザを名乗って恐喝を行う人間もいるが…

警察庁は「恐喝」を暴力団の伝統的資金源と位置付けているが、シノギは変化していることが窺える。

2015年1月、大阪市の飲食店経営の男(30歳)ら4人が30代の司法書士の男性に10代の少女を紹介して関係を持たせ、「ヤクザが家に来て、家族が無茶苦茶にされるぞ」と言って5000万円を脅し取ったとして大阪府警に逮捕された。

前出の指定暴力団幹部「この事件では、カタギの素人さんが、勝手にヤクザをかたって恐喝まがいのことをしている。『自分の名前を使われた、どうしてくれる』などとクレームをつけてくる本物(のヤクザ)が出てきたらどうなるか。あまりに怖いもの知らずだ。」

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2021年5月には、刑務所に服役中に起きた男女間のトラブルに山口組系組員の男が介入し、男性から現金約1500万円を脅し取ったとして警視庁に逮捕された。組員は、仲間の男から「自分が刑務所に入っている間に、元妻がある男性と男女の関係になった」と相談を受けて、現金のほかに車や腕時計を脅し取っていた。