最大の“被害者”は人文科学系の大学教授
米プリンストン大学の研究チームも「生成AIによる職業への影響」を予想しています("How will Language Modelers like ChatGPT Affect Occupations and Industries?" Ed Felten et al., Princeton University, SSRN, March 6, 2023)。
この調査によれば、生成AIによって最大の影響を受ける職種は「大学の人文科学系の教授」です。人文科学とは、たとえば「文学」「哲学」「歴史学」「人類学」等々の学問分野です。これに続いて、「法律事務職」「保険外交員」「テレマーケター(電話による商品・サービス販売員)」の順となっています。
ただし、ここでも「『影響を受ける』ということが必ずしも『仕事を奪われる』ということを意味するわけではない」としています。
ChatGPTの開発・提供元であるOpenAIは、そのサービスのベースにあるGPT-4など大規模言語モデル(LLM)が労働市場に与える影響を分析したレポートを発表しています("GPTs are GPTs: An Early Look at the Labor Market Impact Potential of Large Language Models," Tyna Eloundou et al, Open AI, March 27, 2023)。
デザイナーは影響小、ジャーナリストは影響大
それによれば、米国の労働者の約80パーセントがLLMの導入によって仕事の少なくとも10パーセントに、また約19パーセントの労働者は仕事の約50パーセントに影響を受ける可能性があるといいます。
具体的には、ジャーナリスト、翻訳者、作家、ウェブ・デザイナー、会計士などは影響を受け易く、投資ファンド・マネージャーやグラフィック・デザイナーなどは影響を受け難いとされます。
一方、米マサチューセッツ工科大学(MIT)は、ChatGPTが「マーケティング担当者」「グラント・ライター(米国で政府や地方自治体などに提出する助成金の申請書を書く専門の代行業者)」「コンサルタント」「データ・アナリスト」「人事担当者」「管理職」など一連の職業に与える影響を分析しました("Experimental Evidence on the Productivity Effects of Generative Artificial Intelligence," Shakked Noy et al, MIT, March 2, 2023)。
実際に、これらの職業に従事している労働者444名を集め、2つのグループに分けて(通常30分で終わるような)短いレポートやプレスリリース(報道機関向けの発表文書)等を書く仕事をやらせました。