政府の「異次元の少子化対策」は逆効果

私は別に人口増論者ではありません。人口は緩やかに減っていっても、安心して暮らせる社会をつくるべきであって、無理に産めよ増やせよと言っているわけではない。「産みたいのに産めなくさせている政治はおかしい」と言いたいだけです。今は産みたいのに産めない社会であるために、子どもの数が極端に減り続けている。それによって社会を支える人間が急速に減っていけば、人口の減少と同時に国民の負担は限りなく膨らみ、本当に国は滅びてしまいます。

国は異次元の少子化対策の財源を、社会保険料の増額や消費税増税などから捻出することや、加えて高校生の扶養控除を廃止する案まで持ち出しています。しかし、社会保険料の増額も消費税増税もまったく必要ありません。ましてや扶養控除の廃止は逆にマイナスの負担になるわけで、むしろ少子化を加速させてしまいます。一体国は何を考えているのか理解に苦しみます。

財源については、明石市が増税も何もせずに無料の子ども関連施策を実施したように、国も予算を適正化して子どもにまわせば十分にできるはずです。

3.5兆円と言わず、10兆円の予算を組むべし

国は防衛費について、2023年度から5年間で総額43兆円と現行計画の1.6倍に積み増すことを決定していますが、実際の規模は60兆円近くになるとの報道もありました。これほど防衛費を増額できるなら、「静かなる有事」と自ら言う少子化への対策に今すぐ優先的に重点投資すべきです。

防衛を強化しなければ国が滅びるというなら、その前に少子化対策をしっかりしなくては、国土が守られても住む人がいなくなります。陣地を守るのか、人を守るのか、どちらを優先すべきかという話です。もし、予算をまわすのが現状、難しいというなら、つなぎ国債でも発行して財源確保すればいい。

少子化対策には、3.5兆円の予算規模が見込まれていますが、私からいわせれば、3.5兆円なんてまったく少な過ぎます。国民に安心を与えるサプライズがまったくない。内容も予算も皮肉な意味で「異次元」です。

一気に10兆円の予算を組んで、大学の無償化をはじめ、子育てにかかるコストを劇的に少なくすれば、坂道を転げ落ちるような出生率は間違いなく回復するはずです。高等教育における「社会が賄う部分」と「自分が賄う部分」の費用負担割合は、フランスをはじめとする欧州各国はおおよそ7対3なのに対し、日本は正反対のほぼ3対7。日本が欧州並みになるには、国民の強い安心感が得られる思い切った子育て施策が必要です。