「博物館大国」日本が直面している問題

博物館は、高度成長期やバブル期にさかんに造られた。文化庁の調べによると、国、都道府県、市町村、企業、個人など設置者も規模もさまざまな形態の博物館が5700以上あり、日本は「博物館大国」だという。

「国立」を冠し、国費が投入されている博物館も、国立科学博物館のほか、「国立東京博物館」「京都国立博物館」「国立民族学博物館」などいろいろある。

多くの施設で老朽化が進み、改修費用などの問題を抱えている。

日本博物館協会の2019年の調査によれば、「収納庫に入りきらない資料がある」ところが約4分の1弱を占めた。多くの施設で老朽化が問題になっており、県立、市立では8割以上だった。

今年1月発売の月刊誌「文藝春秋」に、文部科学省の元事務次官で東京国立博物館館長を務める藤原誠氏が寄稿した。その中で「光熱費予算が約2億円の計上に対して、電気・ガス代の値上がりでその倍以上の約4.5億円もかかる見込み」「国からの交付金が年間わずか約20億円に過ぎない小さな予算規模で、年間約2.5億円も新たに負担することは非常に困難」などと訴えた。

これに対して「文科省のトップだったのだから、在任中にきちんと予算をつける仕組みを作っておくべきだったのではないか」などの指摘もSNSなどで出たが、博物館の抱える苦境を世間に伝えたことは間違いない。

老朽化で雨漏りし、収蔵庫に入りきらない

国の関連の研究施設でも同様の問題が起きている。東大の研究施設「小石川植物園」(東京都文京区)は、NHK連続テレビ小説「らんまん」のモデルとなった植物学者・牧野富太郎氏が活躍した拠点として有名だ。

明治期から集めた80万点を超える植物標本を収蔵しているが、老朽化で建物の雨漏りが進み、収蔵環境が悪化。収蔵庫も満杯になり、標本の収集という本来の機能が果たせていないという。このため今年4月から、施設整備、建物の修理を行うための寄付を東大のウェブサイトで募っている。

世界最大級の直径45メートルの電波望遠鏡を保有し、「日本の電波天文学の聖地」と呼ばれる国立天文台野辺山宇宙電波観測所(長野県南佐久郡南牧村)も、国からの予算削減で財政難に陥った。

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毎夏開催の一般向け特別公開イベントの縮小が懸念されていたため、窮地を救おうと、地元の南牧村が2020年10月~21年1月までCFで300万円を募ったところ、約620万円が集まった。

国立科学博物館のCFを支援した人々から寄せられた4万4000件以上の応援コメントにも、「大切な教育機関であり、研究機関がこのようなことになっていることに、悲しみと怒りとやるせなさがあります」「国の支援が充実するよう期待します」などの指摘が目立った。