「グレーゾーン」と呼ばれる軽度認知障害
アルツハイマー病に限らず認知症全般について、「軽度認知障害」というグレーゾーンの段階があることがわかっています。
軽度認知障害は、専門家の間ではMCI(mild cognitive impairment)と呼ばれており、いわば認知症予備軍と考えることができます。日本には現在、400万人ものMCI該当者がいるとされ、それは65歳以上の高齢者人口の13%にも相当します。
MCIは、そのまま放置すれば約半数の人が認知症を発症すると考えられている一方で、この段階で適切な予防治療を行なうことができれば、発症を防いだり遅らせたりすることも可能だとわかっています。MCIは、図表1にあるような分類がなされています。
まず記憶障害があるかないかで、「健忘型」「非健忘型」に分かれ、さらに、記憶障害のみに留まっているか、空間機能、言語機能、実行機能などほかの機能にも低下が見られるかによって「単一領域」「多重領域」に分かれます。
それらの組み合わせで、「健忘型・単一領域」「健忘型・多重領域」「非健忘型・単一領域」「非健忘型・多重領域」の4つのタイプに区別されます。
2013年にオーストラリアの研究チームがMCIの人たちを2年間追跡調査した結果、それぞれのタイプによって図表2にあるような推移が見られたそうです。
ほかにも、さまざまな研究において、似たような数字が報告されています。
日本神経学会の「認知症疾患診療ガイドライン2017」によれば、健常者がMCIを経て、軽度認知症、中度認知症、重度認知症と進んでいく過程の中で、MCIと診断された段階で適切な予防治療を行なえば、16~41%の人が健常者ゾーンに戻っていくことが示されています。
とにもかくにも、アルツハイマー病を発症する前の対策が非常に重要だということがわかるでしょう。