コロナ禍で銃の購入数が40%増加
銃産業の主要業界団体である「全米射撃スポーツ財団(NSSF)」によれば、2022年現在、米国内には約4億3300万丁の民間所有の銃が出回っているという。筆者が1990年代初めに米国で銃問題の取材をした時は約2億6000万丁と推定されていたので、この30年の間におよそ1.6倍に増えたことになる。
特に新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年1月ごろから、社会不安の高まりなどで銃の購入が増え始めた。銃暴力についての研究調査などを行っているNPO団体「エブリタウン・フォー・ガン・セーフティー(EFGS)」によると、2020年に米国人が購入した銃の数は約2200万丁で前年よりも約40%増加した。2021年は1990万丁で前年と比べて減少したが、アメリカ人の銃に対する関心はいまだに高いといえる。
銃規制が緩く、銃購入者の身元調査がきちんと行われていない米国では銃の売り上げが増えると、犯罪歴のある人や社会への怒り、憎しみなどを抱えた人たちの手にも銃が渡ってしまうため、結果的に銃撃事件が増えることになる。
EFGSは全米129の主要都市を対象に、コロナ禍前後の2019年から2020年にかけての銃暴力犯罪の発生状況を調査したが、そのうち4分の3近くの都市で銃による殺人が、約5分の4の都市で銃による傷害が増加したことがわかった。
銃乱射事件は2年間で200件以上も増加
また、米国では4人以上の死傷者を出した銃撃事件を「銃乱射事件(mass shooting)」と呼んでいるが、これもコロナ禍になって急増。銃暴力に関するデータを収集するNPO団体「ガン・バイオレンス・アーカイブ(GVA)」によれば、2019年に417件だった銃乱射事件は2020年に611件、2021年に693件と激増した。
さらにコロナ禍は銃暴力被害全体の数字にも影響を与え、米国疾病予防管理センター(CDC)の調査では、2020年に銃で命を落とした人の数は殺人・自殺・誤射事件などを含め4万5222人となり、前年の3万9707人より大幅に増えた。
このように米国は世界に類を見ない「銃大国」だが、それはこの国と同盟関係にある日本にとっても他人事ではない。特に米国を訪れる日本人観光客や長期滞在する留学生、駐在員などにとっては生死に関わる問題である。