結婚の意思がある未婚者が増加
男としてのプライドの高さや収入の低さなど、それぞれが抱える結婚「できない」理由は違えども、共通しているのは、「男はモテなければならない」という「モテ信奉」によって、精神的に追い詰められていたことである。男性の非婚化の進行に、このモテ信奉が及ぼす影響は計り知れない。
まず、非婚化の現状をデータから見ておこう。男女ともに晩婚・非婚化は進んでいるが、男性のほうがはるかに深刻だ。
国立社会保障・人口問題研究所によると、2020年の50歳時の未婚割合は、男性は28.3%と3人に1人に迫る勢いだ。女性(17.8%)の約1.6倍に上る。
未婚者が急増する一方で、15年の第15回「出生動向基本調査」(国立社会保障・人口問題研究所)で「いずれ結婚するつもり」と回答した18〜34歳の未婚男性はいまだ85.7%に上る。
20年近く前の第11回調査(1997年)の85.9%と比べても、ほとんど変化はない。例えば20年に50歳の人が35歳だった05年の第13回調査では未婚男性の87.0%が「いずれ結婚するつもり」と答えていることからも、結婚意思がありながらも現時点で結婚に至っていない可能性が高いといえるだろう。
ますます厳しくなる「女性が求める条件」
モテる男を実現できなくなった背景には、女性側の事情も大きい。女性が仕事で能力を発揮する機会はかつてに比べ、飛躍的に増えた。
一見、女性は変わったようである。だが、結婚相手に求める条件は緩くなるどころか、さらに厳しくなっているのだ。その変遷を整理してみたい。
バブル期の定番だった理想の男性は、「3高」(高学歴、高収入、高身長)。これはバブル期の1986年に男女雇用機会均等法が施行されて女性の仕事での活躍が期待され始めた潮流に反し、男性が外で働き、女性は家事・育児に専念するという家父長的な結婚の価値観を引きずっていたものだった。
バブル崩壊後の女性の理想の男性像について、先に紹介した小倉千加子は著書『結婚の条件』(2003)の中で、「3C」(Comfortable=快適な、Communicative=理解し合える、Cooperative=協調的)と指摘した。