偽薬効果は期待によって生じる
このような原因の帰属のエラーが生じるのは、他人に対してだけではありません。
たとえば、コーヒーを飲んで「眠れない」と思っていたら、実はカフェインレスだったり、咳止めの錠剤を飲んで「咳が止まった」と思っていたら、実は間違えて胃薬を飲んでいたり……。
このように、実際には有効成分が入っていない飲み物や薬でも、「効く」と思い込んで飲むと、本当に症状が改善されることがありますよね。この現象を「偽薬効果」または「プラセボ効果」といいます。「プラセボ」は英語のpleaseと同じ語源で、ラテン語で「喜ばせる」という意味の語に由来しています。プラセボ効果は、その「薬」あるいは「効く」と称されるものを飲む人の心理的状態とも関連するとされています。
偽薬なのに副作用が出る⁉
医療の場での偽薬効果は、薬の効き目に対する患者の期待によって生じるとされています。期待は、過去の経験や他者の治療経過の観察、治療に関する説明などによってつくられます。また医療提供者の態度や感情、やり取りのスタイルなどにも強く影響されることが報告されています。
そこで、新薬の開発では「二重盲検法」という試験法が用いられます。
参加者をランダムに2群に分けて、同時に同期間、一方には偽薬、もう一方には新薬を投与して結果を比較します。このとき期待などのバイアスが結果に影響しないよう、どちらが偽薬群なのか医師にも参加者にもわからないようにして試験を実施します。この方法で明らかに偽薬を超えた効果が認められれば、新薬が承認されるのです。
プラセボ効果とは対照的に、副作用を心配する患者によって、偽薬なのに実際の薬と同じような副作用が出てしまうことを「ノセボ効果」と言います。ノセボの語源もラテン語で、「害する」という意味です。
二重盲検法の中で偽薬を投与された参加者に副作用が見られたことが、この効果の最初の報告となりました。