これまでの「モチベーション」は時代遅れ

「ノルマを達成して金銭を得たい」「上司の指示に従って評価されたい」など、モチベーション2.0の多くは外発的モチベーションです。これらは成果がわかりやすい一方で、与えられた仕事や課題「以上」のことはしにくくなります。

さらに、成果がはっきりせず評価が難しいイノベーションや創造性は生まれにくくなります。利他的行為も直接的に自分の成果とすぐには認められないため、モチベーションが下がるでしょう。

さらに、モチベーション2.0が強すぎると、目先の成果を追い求めるあまりに不正をはたらいたり、ノルマ達成のためにライバルを蹴落としたり、仲間と協力しなくなったりするおそれが出てきます。利己的モチベーションがとても強くなってしまうのです。

そのような問題が浮き彫りになるなかで、モチベーション2.0の限界を超えるための新たなものとして「モチベーション3.0」が提案されました。外発的モチベーション主流のモチベーション2.0に対して、モチベーション3.0では内発的モチベーションが主流であり、(1)自主性(2)成長(3)目的という3つの特徴を持っています。(図表1)

創造性やイノベーションを求めていく「3.0」

「自主性」とは、与えられている課題の解決方法を他人まかせにするのではなく、主体的に自分の意志で決めることです。他者からの制約を受けずに行動しますが、自分勝手に行動するのではなく、他者と円満に相互依存もできる状態が大切です。自分の意志と責任で行っているので他人のせいにはできませんし、自分で決めたことはやり遂げたいという気持ちが高まるので粘り強さにもつながります。自律的なモチベーションは気持ちの面だけでなく、実際の理解力や成績も上がるそうです。

「成長」とは、掲げた目標を達成するために経験を積み、熟達したいというモチベーションです。成長のモチベーションで重要なのは、「掲げた目標が、現時点の自分では簡単には成し遂げられないものであること」と「目標が、鍛錬によって必ず成し遂げられると信じること」です。これらがなければ、喜びや達成感という報酬を期待できないため、成長のモチベーションは生まれにくくなるといえます。

「目的」は、モチベーションの目的そのものなので、ある意味でモチベーション1.0や2.0でも備わっているといえます。しかし、モチベーション3.0のいう「モチベーション」は、モチベーション2.0のような利己的なものではなく、社会貢献や組織全体の成長も含む利他的な目的を指しています。

以上が示すように、ダニエル・ピンクはこれからの社会において「自主性」「成長」「目的」を軸に、創造性やイノベーションを求めていくことが大切だと提唱したのです。