藤川太のアドバイス
世間一般には会社員で年収1200万円というのはかなりの高収入のはず。Fさん夫婦も住宅を手放すとか、金融機関に金融円滑化法に基づく返済猶予を申請するところまでは追い詰められていない。それに住宅ローンは最近組んだばかりなので金利が低く、借り換えするメリットもない。
そこで最初に手を付けるべきは、豊かになるにつれて全体的に緩み始めた家計のシェイプアップである。まず「キレイな見直し」により家計が再建できるかどうかを検討しよう。
キレイな見直しとは固定費の削減のこと。生活レベルを落とさずに、毎月の出費を抑えることができるので痛みを感じないで済む。ただ高額所得層は適当にやり繰りしても生活ができてしまうために家計簿をつけていないことが多く、問題点の把握が難しい。そこで家計簿をつけることから始めよう。
Fさんが驚いたのは85万円もの月収があるのに毎月の貯蓄ができていないこと。それどころか1万9000円も赤字になっている。これから2人の子どもが相次いで私立高校、私立中学に進学し、やがては大学を目指すのだから教育費を貯めなければならない。
削減効果が大きいのは夫の小遣いと生命保険料。小遣いは3万円減らして5万円にする。小遣いが足りなくなっても原則として補填はなし。そこでFさんには毎日使える金額を把握するための「数字」を常に頭に入れてもらうことに。
数字の計算は簡単だ。月5万円の小遣いを30日で割ると1日1666円、1週間では1万1666円。つまり1日1666円を超えたら使いすぎということなので1500円のランチを食べたら、タバコを買ったり、コーヒーを飲む余裕がなくなることを認識する。同僚と飲みにいって1回で5000円使うと「1万1666円-5000円=6666円」となり、その週は1日952円しか使えなくなる。社員食堂を利用したり安い弁当を買うことで1週間をしのがなければならない。
1カ月分の5万円を頭の中で管理するのは大変だが、1日1666円の管理なら毎日リセットすればよいのだから簡単にできる。ここで大切なことは「コーヒーを飲んだ」というような「何に使った」ではなく、コーヒー代として「360円支払った」という「いくら使った」を認識すること。家計簿をつける目的も同じで、使ったお金の費目分類に頭をひねるのではなく、すでにいくら使っていて、あといくら使えるのかを把握することが大切なのである。