虐待体験のある人は、他人を信じることができない

母親と28回面会した社会福祉士が証言に立ち、語った。

樋田敦子『コロナと女性の貧困2020-2022 サバイブする彼女たちの声を聞いた』(大和書房)

「未成年のうちの大半を施設で育ち、愛されて育つ経験ができず、実母から虐待を受けたことで深い傷を負った」
「生活スキルを身につけないまま社会に出てしまった」
「虐待体験のある人は、人が信じられないんです」
「彼女は、これまで選択肢を与えられてこなかった。人生を選んでこられなかったのです」

2月9日、被告に判決が言い渡された。前述のとおり、裁判長は「悪質かつ身勝手な犯行でかけがえのない幼い命が奪われた」と述べ、懲役8年(求刑・懲役11年)の実刑判決を言い渡した。

事件の背景として判決が指摘したのは、被告自身の「成育歴」と、置き去りを繰り返したことによる「慣れ」の2点だった。被告は公判で、自身の虐待体験を明かし、こうした虐待を受けた被告が適切なケアを受けずに育ったことから【1】人を信頼できない【2】相手に本心を伝えられない【3】相手の要求に過剰に応えようとする――などの性格傾向になったと指摘。のんちゃんを自宅に放置するなどの判断に「複雑に影響を及ぼしている」と認定した。

脱水症と飢餓により亡くなったのんちゃんについては「もっともそばにいてほしかったであろう母親に助けを求められず、一人衰弱していったつらさと苦しみは言葉にしがたい」と述べた。

虐待やネグレクトをしてしまいそうになったら相談を

判決後に会見した裁判員の20代女性は「自分から支援を求められない人にこそ、支援が必要だと感じた。私たちにできることを考えなければならない」と話した。一般社団法人ゆめさぽ・代表理事の田中れいかは、虐待してしまうと思ったとき、またはしてしまったことがあるとき、あるいは育てられないと思ったときは、周囲に相談するべきだと言う。

「制度を知っている側からすれば、ショートステイに出すのがいいでしょうね。一時保護だと子どもが制限されて苦しい思いをするんです。養護施設が実施しているショートステイに直接行くのがいいかもしれません。それを利用して、お母さんが一時的にレスパイト(小休止)して、職員とお母さんが話しながら道を探っていけばいいと思います。子どもが制限を受けないように、育てる環境を作っていけるんです。とにかく、制度を知ってほしいです」

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