「米を食うとバカになる」という本が大ベストセラーに
第2次大戦後、米国は日本人の食生活を無理やり変えさせてまで、日本を米国産農産物の一大消費地に仕立てあげようとした。
そのために、さまざまな宣伝・情報工作も行われた。
日本人にアメリカ産の小麦を売るために、「米を食うとバカになる」という主張が載った本を、「回し者」に書かせるということすらやった。
『頭脳 才能をひきだす処方箋』(林髞著、光文社)という本がそれである。
食料難の戦後がようやく終わったころの1958年に出版されたこの本は、その後の日本の農業に、大きなダメージを与えることになった。
いまでこそ、同書の存在はほとんど忘れ去られているが、当時は発売3年で50刷を超える大ベストセラーであり、日本社会に与えた影響は非常に大きかったのである。
この『頭脳』という本には、「コメ食低能論」がまことしやかに書かれている。
著者の林氏によると、日本人が欧米人に劣っているのは、主食のコメが原因なのだそうだ。
この記述は、当然ながら、科学的根拠がまったくない「暴論」と言わざるを得ない。
だが、著者の林氏が慶應大学名誉教授であったことも手助けしたのか、当時はこれが正しい学説としてまかり通ったのである。