先生ができること:トラブルの有無でなく「楽しく通えているか」を観察

学校側も、早く対応したほうがよいというのは同じです。先生の立場から見ると、子どもが毎日学校に通ってきていれば「大丈夫」だと感じるのではないでしょうか。先生は多くの子どもを見なければいけないので、それぞれの子が「トラブルなく通えているかどうか」という視点で子どもたちを観察していると思います。

しかし、そのような視点では、先ほど述べたように「一見、大丈夫そうだけど、無理を重ねている子」のつらさはなかなか見えてきません。「トラブルがあるかどうか」だけではなく、子どもが「楽しく学校に通っているかどうか」を見ることも大切です。

例えば、授業中のふとした場面で、その子が自分から発言しようとしているかどうか。発言しないで教科書や黒板を見るときにどんな表情をしているか。休み時間に何かを楽しみにして、友達と誘い合っているようなことがあるか。そういう場面に、子どものモチベーションが表れます。子どもの様子を見て、無理をしているように感じることがあったなら、親御さんと相談することも必要かもしれません。

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協力してできること:「何がしんどいのか」を情報共有する

学校の先生も、休み時間などに子どもを見ていて「何かあったの?」と聞きたくなることがあると思いますが、登校しぶりをしている段階では、子どもは先生からの質問には答えにくい場合が多いと思います。

本田秀夫『学校の中の発達障害 「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち』(SBクリエイティブ)

子どもの話は、親が聞いたほうがよいでしょう。基本的に親のほうが子どもとの関係が近く、話しやすい雰囲気をつくれることが多いです。それに対して先生は、子どもの学校での様子を観察する役割が適しています。親は、子どもの学校生活を逐一見学することはできません。授業中や休み時間などの様子については、先生が見ておくのがよいでしょう。

親と先生がそれぞれに子どもへの理解を深め、「こういう活動がつらいと言っています」「授業中にこんな様子が見られます」といった情報を共有していけば、子どもの抱えている悩みごとに対処しやすくなるはずです。そのようなコミュニケーションを通じて、学校側の環境をどのように調整できるのかを、親と先生で考えていければ理想的です。

ただ、現実的には、親と先生で情報共有をしながら学習環境を調整しても、子どものモチベーションがなかなか上がらないということもあります。特に通常学級に通っていて、しんどさを感じているというお子さんの場合、授業中の活動などを少しアレンジしても、状況があまり変わらないこともあります。その場合には特別な場での教育を利用して、子どもに合った個別のアレンジができるようにしたほうがよいかもしれません。

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