本人の意思を伝えられる代理人の存在が重要

終末期における延命治療については、さまざまな方法があります。いわゆる三大延命治療と言われているのが、「人工呼吸」「人工栄養」「人工透析」です。

中でも、口から栄養が取れなくなった場合に行われる「人工栄養」は種類も幅広く、点滴で注入する「末梢まっしょう静脈栄養法」、心臓に近い太い静脈に注入する「中心静脈栄養法」、鼻からチューブで胃に送る「経鼻経管栄養法」、胃に直接チューブで送る「胃瘻いろう」などがあります。

これらの治療は具体的にどのように行われるのか? 治療を行うことによってどのようなリスクがあるのかなど、それぞれのメリット・デメリットについて、医師から十分な説明を聞くと同時に、不安な点を確認しておくといいでしょう。

患者さん本人が自分の意思を明確に伝えられる場合はよいのですが、終末期の時にはすでに話せる状態にないことも多いかもしれません。

その場合には、本人に成り代わって、意思や希望を伝えられる代理人(代理意思決定者)となる人がいるとスムーズです。

前田和哉『自分らしい最期を生きた人の9つの物語』(KADOKAWA)

例えば、「父(母)は、昔から食べることが好きで、『口から食べられなくなったら寿命だ』と言っていた。だから、胃瘻いろうの造設はしないでほしい」といったことや、「本人は延命治療を望んでいないが、痛かったり苦しかったりするのはとても嫌だと言っていた。最期、苦痛だけでも取り除いてもらえないか」など、本人の望みをまるで“影武者”のように医師に伝えられるとベストです。

そのためにも、「自分がどういう最期を迎えたいのか」を日頃から家族や身近な人に伝えておくと同時に、家族自身も本人の意向や考え方を知る努力が必要だと言えます。

幸せな最期とは、自分の望んだ形で人生のゴールテープを切れること――。多くの終末期の患者さんやご家族を見てきて、そう実感しています。

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