先輩女性隊員の「嘘をついている」との発言に不信感を抱く五ノ井さんのLINE。画像の一部を加工しています(本人提供)

続いて、2人目の男性隊員Kも「首をキメて」押し倒し、Sと同様の動きをした。さらに続いた。3人目男性隊員Rは同様に押し倒した後、五ノ井さんの両手首を押さえつけながら、何度も腰を振ってきた。

「全力で抵抗しようと、手首に力を入れて振りほどこうとしましたが、男性の力にはかないません。諦めて、終わるのを待つしかありませんでした。終わって体を起こすと、周りの男性隊員たちはこっちを見ていました」(同)

コトが終わると、Rからは「五ノ井って案外力が強いな」と言われた。五ノ井さんが抵抗していたことはわかっていたのだ。

一旦話題が収まったにもかかわらず、再び一曹Eが格闘技の話を面白おかしくしはじめて、「あれ、首をキメて倒すのどうやるんだっけ?」と笑いながら言い出した。すると、再びSが、五ノ井さんの首に両手を当てて押し倒し、腰を振ってきた。五ノ井さんの引きつった顔を見たSは「これ誰にも言わないでね」と口止めしてきたという。

「もう限界でした。訓練場所は、すぐに抜け出せる環境ではありませんでしたが、先輩の女性隊員と中隊長Mに相談して、帰りたいとお願いしました」(同)

先輩女性隊員は、最初は味方してくれたが、男性中隊長が「訓練は訓練だ」と言うと、「そうだよ、訓練は訓練だから」と態度を変えた。訓練はあと20日以上続く。これ以上耐えられないと感じた五ノ井さんは、訓練から抜けることを懇願した。だが、セクハラを受けたことが理由では、6月の時のように告げ口したと思われてしまう。母親が倒れたことにして、実家に帰れることになった。

この時、先輩女性隊員からは「一応、嘘ついていることは心の隅にでも置いておいてね」と言われた。エスカレートする性被害から逃れるための苦渋の判断にもかかわらず、被害者である五ノ井さんに非があるような言い方に聞こえた。

被害届を出すも不起訴処分

この8月の性被害の後、適応障害と診断され、五ノ井さんは休職することになった。被害については、まず、自衛隊の総務・人事課にあたる「一課」にセクハラ被害を報告した。だが、一課からは「8月のセクハラの件を見たという証言が得られなかった」と回答された。次に、自衛隊の犯罪捜査に携わる警務隊(防衛相の直属組織)に強制わいせつ事件として被害届を出した。