30代全体の中で結婚に消極的なのは1割

加えて、従来の調査では18歳から34歳をまとめて結果の概要を示しているが、今回の調査でははじめから20代、30代、40代に分けられている。「結婚願望なし」層は、女性20代で10%、30代で19%、40代で31%、男性20代で14%、30代で21%、40代で30%と、年齢が上がるほど高くなる。従来の調査よりも高い年齢層に注目したために「結婚願望なし」が多くなったのだろう。

つまり、「30代の4分の1に結婚願望なし」という今回の結果は、結婚に消極的な層が可視化された結果であり、結婚願望が急激に下がったわけではないと考えるのが妥当であろう。

もうひとつここで強調したいのは、「30代の4分の1」はあくまで未婚者が対象という点である。そもそも30代の未婚者は女性の3割、男性の4〜5割である。結婚意思がないのはその4分の1なので、30代全体から見れば1割にすぎない。冷静に考えると、1割の人が結婚に否定的であっても驚くことではないだろう。

ただ、いろいろな生き方があっていいと頭でわかっていながら、それでも身近な人が結婚しないでいると、それを「憂いてしまう自分」に気づく方も多いのではないか。この「私たちの感覚」はどこから来るのか。

100年前の未婚率は3%以下

まずは過去100年の未婚率の歴史をひもといてみよう。過去の結婚願望を知るのは難しいので、未婚率という実態からアプローチする。

図表2は50歳時点での未婚率の推移である。1920年から1970年までの未婚率は3%以下と極めて低い。まさにこの間の日本はだれもが結婚する皆婚社会であった。結婚しないでいる人を憂いてしまうのは、このころの価値観が今も社会の中に残っているからではないか。

その皆婚社会が崩れ始めたのは今から30年前の1990年以降であり、2000年以降に本格化した。これをバブル期に未婚化が進んだ、と理解してはいけない。1990年に「50歳の未婚率」が上がったのは、1940年代生まれ、戦中から戦後の団塊世代の人たちが皆婚社会を終わらせたと読むべきである。そして2000年以降の未婚率の急上昇も、1950年代生まれ、60年代生まれの未婚者が増加した結果であり、けっして最近の若者の傾向ではない。人生100年時代とうたうように、結婚も長い人生のなかのひとつのプロジェクトである。結婚するかしないか、それが私たちに可視化されるには時間がかかる。