男性像の押し付けは解消されたが、男女平等が進まない日本

——「これこそが日本人男性の特徴だ」というものはありますか。

学者という立場で、固有の特徴を「集権化」するのは非常に困難です。

ただ、軍国主義が、「男であること」を示す旧時代の象徴だったとすれば、通常、その古いモデルがもはや支持されなくなった国では、男女の平等という、ジェンダーギャップの解消が進みやすいものですが、日本ではそうなっていません。それが興味深い点ですね。

一方で、多くの国々を旅し、いろいろな国を知れば知るほど、どの国にも、似たようなタイプの男性や人々がいることがわかりました。

人は、往々にして各国の文化の特徴と男性像を結びつけようとしますが、例えば、日本とドイツの男性の違いに注目するよりも、世界の男性像をグローバルに眺めることのほうが、はるかに重要です。

家庭を持つことは社会的な期待を伴う

——6月14日、日本政府が閣議決定した2022年版の男女共同参画白書には、結婚などに関する内閣府の調査結果が含まれていました。それによると、独身の20代男性のうち、誰ともデートをしたことがない人は約4割に上っています。さらなる少子化などへの懸念も指摘される一方で、心配は要らないという反論も聞こえてきます。どう思いますか。

まず、デートしたことがないという男性の割合が、デート経験がない女性の割合を大きく上回っているのを見て、「女性は誰とデートしているのだろう?」という疑問が湧きました。同年代の男性ではなく、年上の男性とデートしているのでしょうか。

次に、「デート」という定義の解釈をめぐり、男女で食い違いがあるのではないかとも感じました。男性が考えるデートとは、誰かから誘われることを意味するのか、それとも自分からデートに誘うことを意味するのか、と。

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一方、女性はどうでしょう? 彼女らが「誰かとデートしている」と言うとき、男性と同じ意味で使っているのか、それとも、相手との間で「デート」という言葉が使われなくても、女性はそれを「デート」だと考えるのか、と。

また、この調査を実施した行政機関は、明らかに異性愛者のカップルのみに関心があるとも感じました。

次に他国との比較ですが、こうした調査で未婚・非婚などの理由を尋ねると、恋愛や結婚、子供を持つことで生じる責任や重荷を背負いたくない、自由な身でいたいという答えが他国でも目立つものです。

つまり、内閣府の調査を額面どおりに受け取れば、男性も女性と同じように結婚や子供をもうけることに二の足を踏み、少なくとも正式なデートや恋愛関係の構築には乗り気でない、ということが明白になったようにも見えます。家庭を持つことには、社会的な期待や経済的負担が伴うからです。