機械も使うが、結局は「見た目、匂い、触った感じ」

阿佐比一の話(御殿場コース チーフグリーンキーパー)

――御殿場コース(静岡県)のグリーンキーパーをやっております。役目としまして、チーフグリーンキーパーという肩書もあり、地域ブロックのリーダーでもあります。御殿場コースの管理部は16人。普通のゴルフ場よりは数人、多いです。年に1回、大きなトーナメントがあります。準備には確実に人手がいるので、お金と人間は潤沢にいただいております。

私たちの目的はダメになったところをお客さまに見せないこと。1年、365日、同じ状態をキープしなければいけないのが使命です。およそ不可能なことなのですが、しかし、目的を変えることはありません。

私はグリーンキーパーの命は手だと考えています。例えば、手のひらで芝を触ります。芝の上がザラザラしてると、ボールは撥ねる。手のひらで触って、つるつるであればボールは撥ねない。グリーンの面がきれいに出ているかどうか、それは触ってみないと分かりません。

写真提供=太平洋クラブ
「グリーンの面がきれいに出ているかどうかは、触ってみないと分からない」と話す

普段からグリーンの面を感じるのは見た目、匂い、触った感じです。機械でチェックしたりするのが、現代のグリーンキーパーの姿みたいなところがあるんですけど、結局、自分の手で触って感じてみないと分からないことなんです。

朝刊が届く時間にはもう家を出る

――私はだいたい出勤するのが朝の5時。起きるのは4時20分。家は御殿場コースの近所にあります。単身の人間もいるけれど、私はひとりで炊事洗濯をしたら、ちょっときついなと思ったので家族と一緒に暮らしています。ですから妻にはとても感謝しています。

仕事の日は朝刊を読んだことはありません。まだうちに届いてませんから。家で朝食を食べたこともありません。妻がサンドウィッチを作っておいてくれるので、毎日、それを持ってきて、事務所で食べます。5時に来て、まずコースを見に行きます。特に心配なグリーンを3つほど見ます。とにかくグリーンを見て、手で触ってきます。グリーンがダメだと営業に支障が出ますから。

御殿場コースでグリーンに対するクレームは出ないのですけれど、コンディションが悪いと、プレーヤーの楽しみがなくなります。凹凸がないかと芝がちゃんとあるかどうか。