善玉菌の代表格「ビフィズス菌」のスゴい働き
善玉菌といわれる腸内細菌群の中で代表格は、ビフィズス菌と乳酸菌です。中でもビフィズス菌は乳酸菌の100倍以上多く棲んでおり、腸内のビフィズス菌数の変化は、乳酸菌よりも人体への影響が大きいと考えられています。
加齢に伴うビフィズス菌の減少は便秘傾向をもたらし、さらに、認知機能や性格にも影響する可能性が考えられます。
順天堂大学でも高齢者の慢性便秘症患者さんへのビフィズスのBB536菌の服用治験では、まず、便秘の改善に明らかな効果がありました。さらに、脳の機能や皮膚や筋肉の老化の防止・改善、血管系疾患への作用などの研究を進めてきました。
先般、順天堂大学東京江東高齢者医療センターでは、MCI(軽度認知障害)を疑われる方に、あるビフィズス菌株(B.breveMCC1274)とプラセボを4カ月間摂ってもらったところ、ビフィズス菌群では即時記憶や遅延記憶、視空間・構成などの認知機能が有意に改善していました。ある種のビフィズス菌では認知機能の改善効果があるという可能性が一段と深まりました。
ビフィズス菌が作り出す酢酸や酪酸は非常に強い殺菌作用を持ち、エネルギー源となるだけでなく、炎症を抑える働きをします。これによって、脳の神経ニューロンの働きをよくし、(その10倍以上存在する)グリア細胞という神経細胞の栄養代謝を促進、免疫や生存に関わる機能を刺激したり、腸管の上皮細胞の傷を修復し、悪玉菌を抑制している可能性が考えられます。
つまり、ビフィズス菌を増やすことは、酢酸などの有用成分を増やし、炎症を抑えるシグナルを全身に伝えることで、脳の炎症も抑えて記憶力の維持など認知機能を改善させることにつながる可能性が考えられます。
ヒトは誕生後2~5歳までに著しく脳が発達し、成熟していきます。この期間に腸にたくさん存在するビフィズス菌は、加齢と共に減少し、後期高齢者では著しく少なくなります。
脳の生育期である乳幼児に多量に存在したビフィズス菌株を高齢者に補充することが、脳細胞群の再活性化をもたらすのではないかと私たちは考えています。
腸内を整えるのに最適な食べ物
ディスバイオーシスを改善するには、まず腸に入る食べ物を変えることが大切です。日常的には水溶性の食物繊維やオリゴ糖の多い野菜、果物、海藻類などをよく摂り、健康な腸内フローラが育ちやすい腸内環境を作ります。また、できるだけヒトのビフィズス菌や乳酸菌などを含むヨーグルトや、イソフラボンなどの抗酸化作用を有する、日本独自の味噌を摂ることも役立ちます。
体に有益な作用をもたらす善玉菌の生菌を製品化したものをプロバイオティクスといい、乳酸菌やビフィズス菌の入ったヨーグルトや飲料として販売されています。1本に100億~400億個が入っていますが、腸内フローラにいる37兆~40兆個の腸内細菌の数と比べるとごく僅かにすぎません。
胃に入って胃酸で死んでしまう菌もあります。生きたまま大腸までたどりついても、外から摂取したビフィズス菌は定着しにくいのです。しかし、たとえ微量でも腸内に入って免疫を適度に賦活(活性化)したり、腸管粘膜の防御機構を強化したり、腸管運動をコントロールする作用があります。これらを「プレバイオティクス」といいます。
「生きて届かないと意味がない」わけではないので、乳酸菌やビフィズス菌入りのヨーグルトや乳酸飲料などを摂るのはよいことでしょう。製品によって使用されている菌が違いますので、自分の体に合うものを摂ることが大切です。自分の体に合っているかどうかは、便の匂いや状態から判断することができます。