「恐ろしい病気」は人により異なるもの
(1)の「COVID-19を恐れない人」は、新型コロナが原因で亡くなっている人の数が死者数全体から見て割合的に著しく少ないこと、さらにコロナで亡くなった人の圧倒的多数が高齢者であることをデータから理解し、「このウイルスはそこまでヤバくない」「特定の層(高齢者)ばかりを過剰に守るあまり、全体が不利益を被るのは合理的ではない」と冷静に見極めている。
加えて「恐ろしい病気」であるかどうかは人により捉え方が異なる、という現実も知っている。
私がこれまでの人生でいちばん苦しかったのは、2017年9月に「扁桃周囲膿瘍」にかかったときだ。ヤブ医者に「ただの夏風邪」と診断され、3週ものあいだ、喉を針で刺し続けているかような猛烈な痛みに苦悶させられた。固形物が食べられず、主食はゼリー飲料になって、体重は激減。さすがに「普通の夏風邪のわけがない」と考えて別の病院に行ったところ、扁桃周囲膿瘍であることが明らかになった。喉に注射針を刺し、とんでもなく大量の膿を吸引してもらったところ、ようやく痛みが治まった。医師からは「アンタ、明日までウチに来てなかったら窒息で死んでいた」と言われた。
コロナ対応をサンクコスト的に捉えている人々
私の知り合いは、痔の一種である「痔瘻」が「生きてきたなかでもっともツラい経験だった」と語っていた。この病気は、肛門の周囲に小さな穴が複数開いてしまい、そこにバイキンが入り込んで激しい痛みに襲われる、というもの。
以前、私はツイッターでこの件を紹介し、「恐怖の対象となる病は人によって違う。だから一律にコロナを“恐怖の殺人ウイルス”と信じなくてはいけない状況はおかしい」といった趣旨の発言をした。すると「痔瘻は他の人に感染しない」などの反論が、コロナを恐怖の殺人ウイルスだと頑なに信じている人々から寄せられた。
ツイッターユーザーのsahoten氏(@sahoten1)は、自身の経験した痔瘻のツラさを次のように述べている。同氏にとっては、痔瘻こそが本当に怖い病気なのである。
〈病院に行くのがもう少し遅れてたら死んでたよと言われた痔瘻で3年間かかりました。座ることもできず、立つか歩くかの姿勢のみ。仕事も腹ばいになってPC操作。ご飯食べるときも立ち食い。手術は9回。苦しい3年間でした……〉
こうした意見に触れても、「人によってキツい病気、恐怖する病気は異なる」という当たり前の感覚が理解できず、「そんなものより、コロナを人にうつすことのほうがヤバいだろ!」「とにかく他人に迷惑をかけちゃいけないんだよ!」と主張するのであれば、それはもはや自分の頭で考えることを放棄した家畜も同然ではないか。
コロナ騒動の初期、政治家や専門家、そしてメディアは「恐怖の殺人ウイルスで人がバタバタ死ぬ」と喧伝した。それに影響され、盲信してしまった人々は「恐怖の殺人ウイルス」という設定を変えられなくなっているのだ。「これまでわれわれは必死に恐れ、自粛し、マスクをして、副反応に耐えながらワクチンを打ってきたというのに、新型コロナ様を恐れないオマエは異常だ! みんなのことを考えない極悪人だ! 日本から出て行け!」と、コロナ対応をサンクコスト的に捉えて、引くに引けなくなっているように見える。