行政データをもっと利用可能に

1つ目は、データです。政策をきちんと評価するためには、なるべく集計されていない細かなデータが必要です。私の書いたまん防レポートでは、短期間で書き上げる必要があったという理由もあり、都道府県別のデータを使いましたが、仮に保健所などが持っているより細かなデータを使うことができれば、より精緻な分析をすることができます。

私も色々とアプローチをしていますが、プライバシーなどの理由により、研究者がそのようなデータを利用するのはまだ難しい印象を受けます。さらに、データ専門官がいない場合は、データを準備してくださる行政の方の負担にもなりえます。デジタル化を進め、データ管理や提供の仕方を工夫する必要があると思います。

また、このような理想的なデータの話はまだしも、それぞれの行政機関が持っているデータを中央で一元管理し、公表できるものに関しては、誰でも簡単に手に入れられるようにしていってほしいと思います。日本版DATA.GOVなど、取り組みはすでに始まっています。ただ、その運用にはまだ改善点があることも指摘されています(※4)。新しく発足したデジタル庁の役割が期待されます(※5)

(※4)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCA25CF30V20C22A2000000/
(※5)「デジタル社会の実現に向けた重点計画

官庁や自治体ではデータ専門官の充実を

そして2つ目は、人材です。例えば、私自身も政策評価をするために雇われているわけではありません。自身の研究もあり、教育と大学業務など、他にやることがある中で政策評価を行うのは、あまり効率的とはいえません。

データ専門官を官庁や自治体などで雇用し、外には出せないデータも含め行政データを活用していく仕組みがもっと広まればいいと思います。一部の自治体では、すでにそのような動きも出てきています。その際、実験をもっと積極的に行える仕組みも出来たらいいと思います。虫下し薬の例もそうですが、これらは実際に行われた政策を事後的に評価するだけでなく、研究者らのアイデアを実験などで試すことで蓄積されてきました。行政と研究者のさらなる協力が期待されます。

写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

近ごろ、「エビデンスに基づく政策立案(Evidence-based Policy Making, EBPM)」という言葉を聞くようになりました(※6)。英語の頭文字を取って、「イー・ビー・ピー・エム」と呼ばれたりもします。政策の中身を決める際に、エビデンスをなるべく重視しようという取り組みです。政策評価の過程で生み出されるエビデンスも、これに活用することができます。政策評価の取り組みが、さらに広まればいいと思います。

(※6)EBPMについては、拙論でも解説しています。 

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