【中学受験しない派多数エリアで受験する人々の悩み】

2.周囲から興味本位で見られがち

中学受験の世界を全く知らない人たちから、興味本位でいろいろと探られるのが、ストレスになるという話もよく聞く話だ。少数派ゆえだろうか、なぜか学校でも近所でも「受験をする」ことが漏れてしまうことが多い。どこからか情報入手した人々はひそひそ声でこう詮索してくる。

「お宅、中学受験するんですって? ご優秀で羨ましいわ」
「○○中学を受けるの?」

おそらく悪気はないのだろう。しかし、監視されているようで居心地が悪い。「そっとしといて」と訴える母親は多い。対処法は「買い物はネット」だ。コロナ禍ということもり、極力、外に出る機会を減らし、スーパーなどで顔見知りに偶然ばったりというリスクをゼロに近づけたいのだ。

九州地方に住む母親B美さん(37)もそのひとり。「顔を合わせなければ、聞かれることもない」と周囲の“雑音”を封じたそうだ。そのかいもあって、息子は1月、無事に第1志望校に合格。だが、その事実をご近所やママ友に言うつもりはなく、このまま、そっと卒業式に臨むそうだ。

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3.経験則が使えないために、余計に迷子になる

自分も配偶者も中学受験の経験がない。周囲にも経験者がいない場合、1から10まで「はじめまして」となり、悩みも増える。頼みの綱である塾でさえも悩みの種になることがある。指導法がわが子に合っていない場合、疑心暗鬼に陥ることも少なくないのだ。

近畿圏の受験熱が少ないという町に住む母親C代さん(39)はターミナル駅近くにある大手塾に息子を通わせていたそうだが、席順まで成績順で、毎週、席替えという決まりに慣れず、塾に相談したところ「このやり方がベスト」と叱責しっせきされたという。「そういうものか」と親子で頑張ったが、息子のアトピーが悪化し、不眠の症状も出始めたため再び、相談。

「これを(気力で)乗り越えなければ、合格はない」という室長の一言で5年生の冬に退塾を決意したという。

鳥居りんこ『わが子を合格させる父親道』(学研プラス)

幸い、コロナ禍で大学の講義が対面からオンラインになったため、実家に帰郷していた学生(中学受験経験者)に巡り合い家庭教師を務めてもらえたそうだ。

その家庭教師の学生に「自分に合った学習方法で、自分のペースに合ったやり方でないと伸びない」と言われて目が覚めたという。

「塾の方針や塾の先生の言うことが絶対、正しいわけではないという当たり前のことに気付くことができました。わが家にはわが家のペースがあるってことですよね……」

息子は第2志望校に滑り込むことに成功した。あのまま塾にいたら、全落ちのリスクがあったばかりか、身体を壊していたかもしれず、家庭教師に心底感謝しているという。